せやけど…もう少し踏み込みたいとこやんなぁ……。
アントーニョは考えた…そして考えた結果…
「おかえりのチューはしてくれへんの?」
「へ?」
アーサーの丸い目がさらにまん丸くなった。
と、さらっと主張すると、アーサーは
「そう…なんですか?」
と、おずおずと聞いてくる。
「他はわからんけど、この業界やと普通やで~」
と言うと、信じたらしい。
ちょろすぎる…というか、あかん、この子目ぇ離したらどっかで誰かに騙されて食われてまうんやないか?
親分が抱え込まな~~~!!!!
「じゃ、そういうわけであらためて、ただいま、天使ちゃん」
と、顔を近づけると
「…おかえりなさい…」
と、ぎゅっと目をつぶる。
あかん…あかん、可愛え!!!
真っ赤な顔で硬直していて、アーサーの方からしてもらうのは無理そうだが、まあおいおい習慣づければ良い、と、今日のところは自分の方からチュッとその唇に触れるだけのキスをする。
「丁度台本にキスシーンもあるしな。
少し慣れた方がええっちゅうのもあるから、これからはいってらっしゃいとおかえりなさい、おはようとおやすみのチュウはちゃんとするで」
と頭を撫でると、羞恥で目をうるませ顔を真っ赤にしながら頷く様子が、なんともクルものがある。
今まで女の子にすら感じたことのない感情に、自分はもしかしてそちら側の人間だったのかと、ふと悪友達の顔を思い浮かべてこのシチュエーションに当てはめてみるが、普通に気持ち悪い。
ああ、やっぱりこの子限定なのか、と、自分で納得する。
そのあたり、もう自分に正直、こだわりのない男なのだ。
可愛いものを可愛いと思って何が悪いっ!
欲しい物に手を伸ばして何が悪いっ!
悪友に言ったら「「何、そのジャイアニズム!!」」と口を揃えて言われそうな事を考えながら、アントーニョは最後にぎゅっと可愛い天使を腕の中に閉じ込めて抱きしめると、
「天使ちゃんは親分の家族やからな。他に触らせたりしたらあかんで?」
とにこやかに言って、アーサーの肩を抱えたまま、部屋の中へとうながした。
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