…………
期待したんだ。
一瞬期待したんだ。
もしかしたら撮影の時にでも、チラリとあの綺麗なエメラルドのような目をむけてもらえるかもしれないって期待しただろうがっ!!
グイッとフランシスの襟首を掴むと、フランシスは何か勘違いしているらしく悪い笑みを浮かべた。
「彼女にもうサイン入り写真集あげるって言っちゃったんでしょ?
大丈夫っ!スタッフしかいない会場だし、応募書類とかはこっちでうまく細工しとくし、口きけない役だからさ」
「は?……本気なのか?」
何を血迷ったのかは知らないが、フランシスは本気でアーサーにヒロイン役のオーディションを受けさせるつもりらしい。
「本気に決まってんでしょっ。
大丈夫っ!坊っちゃんまだ成長期で細いし、眉さえなんとかすればウィッグと化粧で女の子に見えなくないから。
まあスタッフには俺とギルが話通しとくし、バレてもトーニョはああいうやつだから面白がりはしても怒りはしないから」
緩んだアーサーの手を放させると、フランシスはにこやかにそう告げる。
殴る…そう、普通ならここは殴るところなのだが、今なんと言った?
アントーニョは怒らない?
…ってことは…?
「おい、オーディションにはアントーニョも同席するのかっ?!」
「そりゃ、相手役だからねぇ。選ぶのも最終的にはトーニョよ?
あ。もしかして、彼女のためにトーニョの何か欲しい?
協力してくれたら、お兄さん責任持ってトーニョの私物何かもらってあげるよ?」
「やるっ!!」
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