寮生はプリンセスがお好き6章_10

こうして不可思議さを残したイベントは、幕を下ろす事になる。

のちに領主の妻の部屋だったとわかったその部屋のベッドに寝かされていたアーサーはもちろんなんの外傷もなく、害される事もなく、ただ静かに眠らされていただけで、切りつけられた銀竜寮の寮長ルークの怪我も軽傷。
それ以外の被害は出ていない。

が…翌日カインの家から迎えが来て、侵入者達もしかるべき場所に引き渡されて調べた結果…学校側の理事との関係性までは掴めなかったものの、前回の時にフェリシアーノが言っていたように、今回の一件はアルを亡き者にしたいと考えたアルの父親側の一族の依頼を受けた者の企みで、メインターゲットを隠すために一緒に殺しても良いと指示があった対象の中に一般の家の人間と言う事でアーサーが入っていたとのことである。

(…ああ…あんたは守りたかったんだな……)
と、そこでストンと全てがつながった。

おそらく…自分と男、もしくはアーサーと妻、どちらかに何か通じるモノをみたのだろう。

今回アーサーの身に危険が迫っているとわかって、この城の持ち主であった領主の幽霊がアーサーを守ろうとしてくれたらしい。

(ただひたすらに…自分の妻を愛し守りたかった男…か……)

帰る前、ギルベルトはカインに頼み、古城の裏手にある領主とその妻の墓に花を供えに訪れる。

血なまぐさい事件を起こしたせいか、資産家の貴族にしてはあまりに小さな墓。
しかしどれほど小さくささやかな墓でも、その隣には愛する妻の墓が並んであるため、男は幸せだったに違いない…そう思う。

ギルベルトはその双方に城内に飾ってあった花で作った急ごしらえの花束を供え、

(…成仏してカミサンに会えたのか?会えたなら今度こそ幸せにな)
と、手を合わせて、その場をあとにした。



こうしてとりあえず前回から続く危険は去ったはずだが、学校の理事の権力争いと言う意味ではまだまだ安全とは言い難そうである。

とにかく一般の家の出身という事で軽い扱いで危険に巻き込まれそうなアーサーを卒業まで…いや、一生守りきらなくてはならない

そのため、ギルベルトの戦いはまだまだ続くのであった。





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