寮生はプリンセスがお好き6章_7

一方でこちらはリビングに残留組。

突然訪れた暗闇の中…
ザン!!!と殺気と共に何かが振りかざされる気配に、香は無言で隣のアルを片手で伏せさせて、それを特注の腕時計で受け止めた。

キン!と乾いた音がする。
そのあたりで暗闇に慣れて来た目が捉えたそれは、案の定磨き抜かれたナイフだった。

と、同時に多方向からの殺気。
それは見知った人間達から漏れたものではないと瞬時に判断して、香は

3年生組っ!何でも良いから灯りよろっすっ!!」
と、叫びつつ、ナイフを持つ襲撃者の手首を掴んで投げを打つ。

「何があったんだっ!!!」
と、その切迫した言葉にカインがスマホのライトをつけて香の声の方向へと向けた。
それと同時にユーシスが弾かれたように消されたランプの代わりにと非常用の懐中電灯をつける。

若干明るくなる室内。
一瞬にして凍りつく部屋。

襲撃者は3年生組以外の金銀2組の12年生に向かい4方向に散っている。

金竜寮組は寮長だけではなく、副寮長であるプリンセスも昨年までのギルベルトほどではないが武道に通じているらしい。
当たり前に不審者を2人で左右両方から押さえつけていて、銀竜寮組は寮長であるルークが迷うことなくフェリシアーノを庇って、腕から血を流している。

金狼寮組は伏せさせられたソファから身を起こすアルと投げ飛ばした不審者の手から叩き落したナイフを拾いあげて相手の喉元にあてて待機。

そして…最後の銀狼寮は……

「お姫さんをどこにやりやがったっ?!!!」
心底顔色を失くしたギルベルト。
その腕の中からはしっかり抱きしめていたはずのプリンセスが煙のように消えていた。

しかしながら驚きの色を浮かべているのは襲撃者の方も同じである。

「ちょ…さっきまで自分抱きしめてなかったっけ?
それなんてイリュージョン的な…?」
と、動揺の色を浮かべながらもかろうじて口を開くのはギルベルトとは同学年の寮長同士という事もあり、それなりに親しい香。

他の寮長副寮長も驚きのあまり固まっている。

「…これは…計画の一環とかじゃねえよな?」
ギルベルトにギロリと殺気じみた視線を向けられてカインは首を横に振った。

「軍曹には…言っただろ?
怪我人を出すような計画はさすがにたてねえぞ…。
てか、こいつらは俺の家の者じゃない…」

「でもここ湖上だし?
船に隠れていたっつ~ことは、誰か手引きした的な?
残ってる使用人全員集合で事情聴取よろ」

「ああ、それは確かにっ!」
と、呼び鈴に手を伸ばしかけるユーシスに、待て!とギルベルトが制止をかけた。

「…使用人の中に仲間がいんなら、先にこいつら縛っておかねえと加勢に入られたらやっかいだ」

「…おっけい。じゃ、3年生組縛って回って下さい」
と、2人で相手を拘束している金竜寮の寮長ロディが言うのに頷いて、カインはテーブルクロスを惜しげもなく切りさくと、ユーシスと2人、それで厳重に襲撃者を縛り上げて行く。

その後3人全員を縛り上げた時点で改めてユーシスが呼び鈴を鳴らした。

念のため…逃走防止にとドアの所に香とギルベルトがスタンバっておく。




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