寮生はプリンセスがお好き6章_5

そしてシン…と静まり返る室内。
その沈黙を破ったのは、とりあえず他人ごとならオッケーを貫く香だ。

「んじゃ、ギル自身はどんな感じ的な?
あ、先に言っておくと、俺は男はイケルかもだけど、うちのプリンセスは絶対に無理な感じ?」
飄々とそう言う香に、そりゃそうだと苦笑する一同。

「あ~でもガチホモは体格良いのも好きって聞くけど」
とそこで淡々と状況を楽しんでいた2年の金竜寮の寮長ロディがにやりと言うと、アルは顔を青くして自分で自分を抱えるように手を回すとブルリと身震いした。


「…と、まあちょっと横やりいれちゃったけど…俺も軍曹の好みは知りたいねぇ。
義務とかそういうのは置いておいて…性癖的なあたりを。
好みって性格的には内気なタイプだよな?
みため小柄で…」
と、そこでロディはすかさずギルベルトに話題を戻す。

「そう…ですね、確かに。
俺様、元々家が要人に仕える騎士から端を発してる家系だし、惹かれんのは守ってやりたいタイプかも」
と、それには普通に答えるギルベルト。

「お宅のお姫ちゃんみたいな?」
「ああ、ま、そういうこと」
と、そこは平和的なやりとり。

「性的にもイケる?」
というやや突っ込んだ質問も
「イケるっちゃイケるけど、プリンセスは寮生全員の宝で御旗だから」
と、かわす。

それに対してじ~っと視線を向けてくるユーシス。
その視線を興味深げに追う面々。

「あ~…ユーシス先輩の気にしてる事なら…」
ギルベルトははぁ~っとため息。

念のためとアーサーの耳を塞いだ状態のまま、
「昨日ですね、部屋帰ってからお姫さんが怖がるし、おばけって色事嫌いっていうからワイ談をと思って…したら、お姫さんには色々刺激強すぎたらしくて。
で、抜くだけ抜いてやっただけ。手は出してません」

と説明をすると、ユーシスは

「へ?そうなのか?!軍曹すげえな。意思が鉄すぎんだろっ!」
と、心底驚いたように目を丸くした。

それに対してもギルベルトは淡々と

「寮長と言えど寮生の1人ですから。
プリンセスのために道を切り開く剣であり、プリンセスを守る盾であるのが正しい。
ということで、この話題は終わり。
うちのお姫さんに気恥かしい思いさせて泣かせる奴がいたら、この城の新入りの幽霊になりたいとみなすことにしますから」
と、最後に釘を刺す。

「はいはい、ほら青少年。いつまでもそういう顔してるとギルに身体と魂分離させられるから、いい加減そっち凝視するの止める的な?
俺が王に叱られるし?」
と、それに応じて香が真っ赤な顔のまま銀狼寮組の方を凝視したまま硬直しているアルの顔を両手でつかんで、グキっと音をさせつつもカイン達の方に向けさせた。

「…ギル…どうしたんだ?」
と、耳を塞ぐように抱きしめていたギルの腕をソッと外して、そんな金狼組に不思議そうな視線を向けるアーサーに、ギルベルトは答えに詰まるが、他も迂闊な事を言って藪から蛇を突きだしたくないとそれぞれ視線をそらせる。

「…ギル?」
コテンと小首をかしげつつ今度はギルベルトを見あげてくる大きな丸いグリーンアイ。

「えっと……」
さきほどの強気から一転、タラリと額から汗を流すギルベルトだったが、助け船は意外な方向から飛んできた。

「あ~、あのね、昨夜の事。
先輩達に脅かされて結構皆怖い思いして過ごしたじゃない?
で、ギルベルト兄ちゃんがね、銀狼寮組はお化けはエッチなモノ苦手だって聞いたからワイ談してたって言うから…。
普段クールなギルベルト兄ちゃんがどんなふうにワイ談とかするのか、俺はちょっと興味あるな。
すごく意外な感じ」

と、にっこりほわほわ、お花畑のように愛らしくも和やかな笑みを浮かべながらそうフォローをいれるフェリシアーノに一同ほ~っと安堵の息をつく。

「もう勘弁してくれ。フェリちゃんに言われると殴れねえし…」
と、片手で顔を覆って言うギルベルトに、ぷすっと吹きだす一同。

「それはそうだな。フェリちゃんと銀狼寮のお姫ちゃんは殴れねえわ、みんな。
ちっちゃすぎて乱暴に扱ったら本気で死んじまいそう」

と、カインがさらに言うのに、皆苦笑しつつ頷いた。





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