自分が手を出したら邪魔になりそうで、でもこのままでは本当にお荷物だと落ち込む。
そう…あんなに勉強しても結局自分は役立たずだ。
遠いあの日、ただただ何も出来ず助けてもらうだけだったあの頃と変わらない…。
アーサーは西の都の名家カークランド家の4男だった。
しかし…名家と言えど4番目ともなればただの穀潰し扱いだ。
なまじ兄弟の中で唯一母親に似た容貌をしていたので、いっそ女に生まれていたら色々便利だったのにと、余計に嫌われる。
なかなか理不尽だが、世の中そんなものだと、アーサーは思っていた。
そんな爪弾きモノでも名門カークランド家としては体面があり、祭り用の衣装だけは立派なものが用意されたが、それも良し悪しで、なまじ名家の人間だとわかるような立派な衣装のせいで、気軽に遊べない。
露天で買い食いをして衣装を汚しでもしたらとんでもないことだし、楽しみはせいぜい綺麗に飾り付けられた街を見て回ることと、今現在お忍びで来ているらしい伝説の武器に選ばれた将軍様と同じく武器に選ばれたらしいそのお孫様をこっそり探してみることくらいだ。
本だけは豊富にある家の中で、いつも一人だったアーサーは小さい頃から伝説の武器の伝承や、それに選ばれた武人達の活躍する御伽話などを読みふけっていた。
つい最近、お孫様とその他3人ほどの少年少女が武器に選ばれるまでは、たった一人で魔人と対峙していた大将軍ローマ様は、すでにその人自身が伝説となってその活躍が描かれて本になっている。
そんな冒険活劇の主人公を実際に目にすることが出来る機会など、この西の最果ての都では、これを逃したら一生ないかもしれない。
立派だが冷たい家の中で無為に日々を過ごしていつか朽ち果てていくのであろう自分と違って、きっとキラキラ輝いているであろう英雄を一目でも見ることができたなら…そんな気持ちでお付きの目をかすめて人混みに紛れ、お忍びの将軍様が行きそうな場所を探して歩きまわる。
が、その途中、大通りの方で悲鳴が上がった。
なんと、魔人がいきなり現れたのだ。
逃げ惑う人々。
それをアーサーは逆走した。
魔人が現れたということは、きっと将軍様が退治しにくるはずだ。
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