まあその模様替えは相手が魔術系ということは自分がやらされるのだろうが、もうこの際それくらいはやってやる。
そんなことを考えながらアントーニョは自室のドアを開け…そして硬直した。
――…へ??
何故こんな所にいるのかがわからない。
真っ白なふんわりとしたケープを羽織った少年。
大きめの窓から降り注ぐ日差しに透ける金色の髪に真っ白な肌。
零れ落ちそうに大きな瞳は淡いグリーンで、それをクルンとカーブを描いた長い睫毛が縁取っている。
まるでこの世に舞い降りた天使か妖精のようだ。
その天使が可愛らしいクマのぬいぐるみをしっかり抱きしめたまま、床にペタンと座り込んでいた。
なん?なんなん?
親分、もしかして自室のドアやなくて、楽園のドア開けてもうた??
うるうると潤んだ大きな新緑色の瞳で見上げられて、心拍数があがる。
「…あの……迷惑…かけるつもりはないから」
と、その可愛らしい口から漏れる聞き捨てならない言葉に、アントーニョは絶叫した。
「迷惑やないわっっ!!!」
迷惑?何が迷惑??
こんな可愛らしい存在が迷惑言うアホがおったら、親分、ルビーアックスで叩き潰したるわっ!!
あかん、かっわ可愛ええぇぇ!!!!
テンションがガンガン上がっていってさらに叫び出したい衝動に駆られるが、今でさえそれをこらえて片手で顔を覆って悶えているアントーニョに少年は若干怯えた様子で固まっているので、これ以上驚かせてはいけないと根性でこらえる。
そう、可愛い可愛いちったい子は、常に大事に大事に守られて安心しきった笑顔を浮かべているべきである!
…それがアントーニョの持論だ。
それを自分が怯えさせるなんてとんでもない。
アントーニョは気合と根性を総動員して、平静を保ち、怯えさせないようにニッコリと微笑む。
「あのな…パートナーやで?!
世界で唯一大事な大事なパートナーのやることで迷惑なんて事、なんもあらへん。
自分のやることの責任は全部親分が持ったるし、必要なことはなんでも手伝ったるし、コンペイ党からだろうと魔人からだろうと、何からだろうと守ったるっ!
せやからなんも心配せんでもええんやで?」
もうそのあどけない愛らしさにアントーニョの脳内からはさきほどまでの諸々がストンと抜け落ちた。
魔術師云々などという発言は宇宙の彼方だ。
可愛いは正義である。そこは譲れない。
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