暗黒の城へようこそ
――な、なんだか気味が悪いんだぞ。これだから欧州は……
イギリスの行方について話したい事がある…そうスペインから連絡を受けて速攻飛行機で乗り付けたのは、スペインのアンダルシア地方郊外にある古城である。
しかしそこでギギ~っと気味の悪い音と共に門があき、アメリカを招いたスペインその人に自ら
「ついたんなら言うてや。
色々嗅ぎつけられると厄介やし、はよ入ってや」
と、うながされると、ヒーローとしては尻尾を撒いて逃げるわけにも行かず、アメリカは渋々、奥へと向かうスペインの後に続いた。
外側も不気味だが、中も負けず劣らず不気味な城だ。
ランタンの灯りのみの薄暗い廊下の両壁には不気味な甲冑。
今にも襲いかかってきそうだ。
「ここな、しばらく使うてへんかってんけど、昔は異端者を審問する場所としても使っとったんやで?
その頃はもう血の匂いとかすごかってんけどな。
今でも当時の拷問道具とか結構残ってるんや」
と、そこでまるで世間話のように本気で止めて欲しいような話をするスペイン。
だからKYって言うんだ…と本気で腹をたてる19歳は自分もそう言われているということは棚の一番上にあげている。
「あ~、ここや」
とにこやかに開くドアの先は申し訳程度に椅子と机の置かれた部屋…なのはいいのだが、問題はその端っこに転がる、おそらく拷問道具の数々。
思わず凝視していると、驚くほど強い力で部屋へと引きずり込まれ、後ろ手にドアを閉められる。
「な、なにすんだい?!」
「なにて…話ある言うて来てもろうたのに、ずっと立ちっぱやったから。
ええから椅子に座ったって。
拷問道具がそないに珍しくて興味あるんやったら、あとで説明したるから」
「いいよっ!そんなのっ!!」
本気で聞きたくない!と思ってさっさと椅子に腰をかけるアメリカに、スペインは
「さよか?なんなら自分相手に使って説明したろかと思うたのに」
と笑えない冗談を言って自分もアメリカの正面に腰を下ろした。
もうこの薄暗い雰囲気からとにかく抜け出したくて、
「この城自体なんか薄暗くて、太陽の沈まない国なんて言われた君らしくないよね」
と、言ってみると、スペインは肘掛けに行儀悪く頬杖をつき、
「何言うてるん?ここめっちゃ“スペインらしい”場所やで?」
と意味ありげに微笑む。
ゾクリとするような冷たい笑み。
「あのな、太陽の沈まない国言われたのは明るいからやないで?
自分とこの広い領土のどこかは昼間でお日さんが照ってる言う意味や。
それだけ広大な領土を手にするためには、明るいだけややっていけへん。
敵は徹底して叩く冷徹さがないとあかんねん」
「ふ、ふ~ん…。
確かに昔はイギリスともやりあうくらい武闘派国家だったらしいよね、君も」
もう帰りたかったが、ここで帰りたいというのも怖い。
とにかく会話を続けなければ…と何故か思って口にした言葉で、アメリカはドツボにはまることになる。
「武闘派…ねぇ…。まあそうやけど…。
それ以上に苛烈な異端審問で有名なんやで?うちの国は。
親分も昔は自分で拷問とかしとったしな」
「話っ!いい加減本題に入ってくれないかいっ?!」
限界だった。
体中にびっしょりと嫌な汗をかきはじめてアメリカは叫んだ。
「ああ、話な」
にこりとスペインはあっさり話題の切り替えを許す。
「なあ…アメリカ、これ見たって?」
真っ赤なバラの蝋封がされた黒地の封筒をスペインはアメリカに手渡した。
「親分、ちょっと自分に話が聞きたいねん…。
――…なあ……ええやろ…?――」
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