The escape from the crazy love_5_1

欧州会議inドイツ

「ああ?人間のガキだったのかよ」
「…ったりめぇだろうがっ!スペインがいくらアレだって、ネコの事で夜中に電話かけまくったりは……する…かもしれねえが、今回はちげえっ!」

スペインが電話をかけた5日後、ドイツ邸にはイタリア兄弟、家主であるドイツとプロイセンの兄弟の他に、イタリアとプロイセン、両方から話を聞いた日本が集まっている。

スペインが主語を固有名詞にしていたので、よもや人間だとは思わずネコだと信じ込んでいたプロイセンはその勘違いを指摘修正されて、なるほど、と、思った。

まあ…その指摘したロマーノの修正情報も正しくはないのだが、ここにそれを更に指摘修正できる情報を持った者はいない。

なので、とりあえず話はスペインが何故かフランスとアメリカが追い掛け回している男の子どもを匿っているという事で話は進んでいった。


そんな中で、
「…師匠とイタリア君両方からご連絡を頂いた時はもしかして…と思いましたが、お二人同じ件だったんですね」
と、ドイツ作の美味しいクーヘンをフォークで口に運びながらそう言う日本は、そのあと、
「まあ…間を取って猫耳の生えた小さな金髪に緑の目の男の子…とかだと面白いんですが…」
と、意味ありげに微笑む。


「ヴェ~、別に間を取らなくても良いと思うんだけど…。
どうせ話と違うなら、俺は可愛いベッラとかだと楽しいなぁ」
と、その日本の言葉に女の子大好きのイタリアはいつものように謎の奇声を発しながらそうつぶやいて、

「俺だってガキよりベッラの方が良いけど、相手スペインだぞ!
女よりガキに決まってんだろうがっ。くだらねえこと言ってんじゃねえっ!」
と、ロマーノにぺちこ~んと後頭部を軽く叩かれて涙目になる。

そんな二人を横目にドイツは日本の言葉の方に注意を向けた。

「む……何故金髪に緑の目なのだ?日本にはそんな話をしていたのか?」
と、自分と日本、両方に連絡をいれたであろうイタリアに問いかければ、イタリアはきょとんと目を丸くする。

「ヴェ、俺は言ってないよ?見た目についてなんて兄ちゃんからは聞いてないし」
と、イタリアが今度は日本に視線を向けるが、その問いに対して口を開いたのは日本じゃなく、プロイセンだった。

「あ~…うん、あれだな。それであと眉毛が太ければ完璧…ってことか?」
プロイセンに視線を問いかけられて、日本はにこりと微笑んだ。

「さすが師匠、察しが宜しいですね」
「ちょっとまってくれ、兄さんも日本も意味がわからないんだが?」

はてなマークを浮かべるドイツの言葉を遮って、今度はイタリアが、あ~!と声をあげる。

「もしかしてイギリス?」

その言葉にドイツは納得しかねて眉を潜め、ロマーノは本人がいるわけでもないのにビクっと身をすくめた。

そして聞かれた当の本人は笑顔でそれを肯定し、さらに説明を付け加える。

「アメリカさんとフランスさん、お二人が共通して執着しているといえば他にはありませんからね」
「…そうなのか?二人共イギリスとは小競り合いのような喧嘩ばかりしている気がするが…」
「ヴェ、ドイツ、あれはね、単に二人共イギリスに構って欲しくてわざとなんだよ?」
「ふふっ、さすがに人の感情の機微には敏感ですね、イタリア君。
そういうわけなんですよ、ドイツさん」

日本とイタリアがとりあえずそう答えを導き出したところで、しかし…と、まだ納得しかねるようにドイツが口を開いた。

「その子どもがよしんばイギリス似だったとすると…だ、今度はスペインがかくまったりしないだろう?」

スペインとイギリスは嫌いあっている…そういう共通認識のもとに指摘するドイツの言葉に答えたのは、今度はロマーノだった。

「かくまうと思うぜ?」
「は?」
「もしイギリス様似のガキがスペインに縋ってきたら、あいつは馬鹿みてえにデレデレになってかくまうと思う」
「…そう…なのか?」

他ならぬスペインに縁の深いロマーノの意味深な言葉に、日本の目がキラキラ輝いた。

「なんですか?実はいがみ合ってると見せかけて…だったんですか?
西英フラグなんですかっ?!その話kwsk!!!」

「に、日本落ち着けっ!」
ものすごい勢いで食いついて身を乗り出す日本に怯えるロマーノ。
それを見てプロイセンが慌てて日本を止めて、ロマーノを目でうながした。

それに少し落ち着いたロマーノが、それでも日本から少し距離を取り、視線を微妙に逸らして続ける。

「あいつがな、昔々子分を欲しがったきっかけって、フランスの野郎がイギリス様を引き取ってるの見たのがきっかけだぜ?
俺ガキん頃何度も何度もその話聞いてっし。
しかも、
『親分な、あれはあかんと思うねん。
自分んとこで引き取った子ぉにあんなボロボロの服着せてたらあかん。
せやからな、親分、自分の子分にはこんなん着せたろ思うてずっと用意しとったんやで』
…って渡されたのがランタン・スリーブにフリフリのエプロンのドレスだ…。
アイツ自身無自覚だろうけどな、たぶんもともと好みなんだと思う。
ずっと童顔な容姿もそうだし、不器用な性格も…料理下手なんてモロだな。
あいつはしてもらうよりしてやりてえ人間だから。
『ロマはほんまいつまでたっても不器用やなぁ』
なんて言いやがるから必死に料理練習して上手くなったらがっかりしてやがるし。
独占欲も人一倍強いからあんま社交的で皆と仲良しとかいう相手だとたぶん揉める。
自分が愛情重い分、相手からも重い愛情欲しい奴だし。
あ~、そう言えばハッキリ言われた事あったな。
『ロマ最近大人っぽくなってきたなぁ…イギリスなんて全然変わらへんのに。
ほっぺとかぷにぷにで柔らかそうやんなぁ。
ロマも昔はぷにぷにでめっちゃ可愛かったんやけどなぁ…』
って…あれ裏返せば、イギリス様の頬がぷにぷにしてて可愛いって事だよな?」

長年一緒にいる宗主国なだけに、妙に上手い口真似を交えて語るロマーノを前に、日本がものすごい勢いでメモを取っている。

「ま、まあ、今回はイギリス本人なわけではないのだし…」
と、その日本から目を反らすようにそう言ったドイツの言葉は

「わかりませんよっ!!!」
と、目をキラキラ輝かせた日本の言葉の向こうに飲み込まれた。

「そう言えば…イギリスさんにはあれがあったじゃないですかっ!
なんか子どもにする魔法っ!
子ども好きのスペインさんにかくまわせるために、あれで子どもになってスペインさんの所へ逃げ込んだイギリスさんを見て、子どもの姿だからよもやイギリスさん本人だと思わないスペインさんが、好みの容姿で性格も自分を頼りきってくるというもうどないしよ、これ食うてええ?食うてええ?もう食うてしもうた~!!!という状況でprpr…」

「おい、おい日本、とりあえず落ち着けっ!イタリアちゃん達が怯えてっから」
と、トリップしかけた日本をプロイセンが現実世界に連れ戻す。

「今はとりあえず誰であろうとスペインがかくまってるガキをフランスとアメリカから守るの手伝うために集まってんだろっ」

「はっ…そうでしたっ。私とした事が……」

そうでしたね…と、若干クールダウンする日本に、互いに抱き合って震えていたイタリア兄弟が、おそるおそるお互いを放す。


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