巻き込まれた人達-プロイセンの場合
『せやから、親分のかわええアーティのために犠牲になったって』
電話に出たらいきなり言われた。
もう何が“せやから”なのかわからない。
ちなみに今は夜中の2時である…。
寝てるところを電話のベルで起こされても、怒るよりは呆れつつ間違いを正そうとする意外に人の良い男、それがプロイセンだ。
とてもとても好意的にとる事にしたその努力を、さすがKYの名を欲しいままにしている悪友は完全スルーしてくれる。
『アーティをな、守ってやらなあかんねん。
あの子めっちゃかわええねんで?
親分とこに逃げ込んで来た時なんかおっきい目うるうるさせてな、もうこれは守ったらなあかんて思うてん。
あんま人慣れてへんから、まずゆっくりスキンシップに慣れさせて、最近ようやく抱き寄せても怖がらへんようになってんで?』
人慣れてない…触れると怖がる……野良猫かなんか拾ったのか?
何かに興奮していると絶対に他人の言う事など聞いてない男だ。
その会話から情報を拾って推理するしかないというのは、長年の付き合いから身にしみてわかっている。
『頭なでると金色の毛が見た目は硬そうなのに実はふわっふわでな、気持ちよさそうに目ぇ細めんのがめっちゃかわええねん』
ああ…ネコだな。
プロイセンはそう決定づけて口を挟んだ。
「ちゃんと注射(予防接種)しとけよ。拾った奴の義務だ」
と言うと
『めっちゃ弱っとったから、もう病院連れて行ったで』
と返ってきて、やっぱりそうか、と、確信する。
『ほんでな、もうこの子世界でいっちゃんかわええから、フランスやアメリカに狙われて追っかけられとるんや。
せやから親分知り合い総動員してでも守ったりたいねん。
プーちゃんも協力してくれるやろ?』
フランスもアメリカもそんなにネコ好きなのか?
それとも何か特別な価値のあるネコなのか……
まあどちらにしろたかがネコの一匹や二匹で大げさな…と思うが、のめりこみやすく感情的な典型的なラテン民族のスペインの事だ。
たかがなどと言ったらハルバード片手に強襲をしかけて来かねない。
そこまでそのネコが欲しいなら、同じ種類のネコを見つけてやればいいだけのことだ。
「ああ、協力してやっから。なんかあったら夜中じゃなく日中に電話しろ」
ふぁあ~とあくびをしながらプロイセンが言うと、
『おおきに!この電話録音させてもろてるからなっ。言質とったで?』
と、不穏な発言を残してスペインは電話を切った。
言質?あ~、もしかして同種のネコの代金は俺様持ちかよ。
またルッツに叱られるぜ…。
と思った自分の予測はとてつもなく甘かった事を知ってプロイセンが涙するのは、それから1週間後の事だった。
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