The escape from the crazy love_4_3

巻き込まれた人達-ロマーノの場合

「スペイン、このクソヤロー!今何時だと思ってやがんだっ!!」

夜中の11時…。
さあ寝ようかと思ってベッドに潜り込んだ瞬間鳴り響いた元宗主国からの電話に、ロマーノは悪態をついた。

――親分一人になって急にロマの事恋しくなって声聞きたなってしもてん、堪忍な~

普段ならそんな言葉が返ってくるところだが、今日のスペインは少し違ってた。

『…ロマ…悪いんやけど、もう少し声潜めたって。
アーティが目ぇ覚ましてまうから。
やっと眠ったとこやのに…』
と、声をひそめる。

へ?
誰だ?と聞くまでもなく、スペインが電話の向こうで嬉しそうな声で告げる

『ロマ、喜びや~。自分にも弟分ができたでっ』
の言葉に、ロマーノは心中、

――あ~…こいつまさかついにやっちまったか…いくら祖国でもガキ誘拐したら犯罪だぞ、コノヤロー

などと失礼な事を考えて……そして口にした。

するとスペインはちゃうちゃう、とそれを否定したあと、存外真面目な口調で言葉を続けた。

『この子な、フランスの変態や、新大陸のメタボにおかしなちょっかい出されそうになって、親分とこに逃げて来てん。
もううち来た時は可哀想なくらい怯えとってな。
こんなちっちゃい子ぉに手だそうなんて、ほんま犯罪やで?
無理矢理なんて絶対にあかん。
もう怯えて怯えて弱って熱だしてもうてな、まだ体調万全やないからホンマ起きひんようにちょっと静かに話したってな』

スペインは確かにいい加減なところもあるが、そういう嘘をつくタイプではない。
というか…本当に手を出してしまったのだとしたら、『やって、可愛すぎて我慢できひんかってんもん』とくらい悪びれずに言う男だ。

とすると…確かに過去を振り返ってみればフランスなら可愛ければ老若男女、それが少しばかり若すぎる男の子だったとしても手を出しかねない…と納得する。

アメリカの事はあまり知らないが、とりあえずスペインの言っている事は事実なのだろうとロマーノは判断した。
そう考えると、子ども好きなスペインがそれをかくまおうとするのも頷ける。

「確かにそりゃあひでえな。で?これからどうすんだ?」

そうなればそんな子ども好きな男に育てられて自分より小さな子どもはかばってやらねばならないと教わってきたロマーノとて、知らぬふりをするという選択はない。

頭の中でかくまう場所の算段などしながらそう聞くと、電話の向こうでは

『さすがロマやな~。協力してくれるって思うとってん』
と、育ての親のうれしそうな声。

それには照れ隠しで
「別にてめえのためじゃねえよ。
そんなチビが変態の餌食になんの黙認なんかしたら寝覚めわりいじゃねえか」
と、ぶっきらぼうに答えた。

よもや…自分が“そんなチビ”扱いしているのが、自分があれほど恐れている“イギリス様”だなんてことは夢にも思ってはいない。
ロマーノの脳内には怯える小さな子どもの姿がインプットされていた。


『とりあえずな、オーストリアにはもう協力頼んでんねん。
あと親分ぷーちゃんにも声掛けよう思うてるんやけど、ロマ、イタちゃんにも頼んで、イタちゃんからドイツや日本ちゃんにお願いしてもらえへん?』

「おう、まかせろ!とりあえず話は通しとくから、休暇終わったらすぐ連絡よこせ」
と、そこで通話を終えてロマーノは自室を出て、

「おい、馬鹿弟!話があんだっ!協力しろっ!!」

と、隣のイタリアの部屋のドアをノックした。


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