「過労で弱ってた所に風邪ひいて悪化しはったみたいやね。
まあ一応ブドウ糖と解熱の点滴一本打っとくさかい、それ終わったら帰りはっても大丈夫やで。
あとは家で消化に良くて栄養あるもん食べさせて、ゆっくり休ませたったらええわ」
人のよさそうな老医師にそう言われて、スペインはへなへなとその場に崩れ落ちた。
安堵のあまり力が入らず、椅子に捕まるようにして座り直すと、医師が点滴を打つ様子をボ~っと眺めた。
こんな細腕でかつて世界を牛耳ってたのかと思うと不思議な気がする。
どんだけ無理してたんやろうな……
そう思った瞬間、胸がチクチク痛んだ。
未だこんな細っこいということは、スペインとガチで対峙していた頃など、どれだけちっちゃかったんだろうか…。
歴史にIFはないわけだが、もし自分が早くにこの子を見つけてやっていて、ロマーノと一緒に家で育ててやっていたとしたら…無理することもなく傷つくこともなく、昨日みたいに可愛らしくほわほわと笑っていたんだろうか……。
ああ…可哀想な事したなぁ…こんなちっちゃかったのになぁ……
すでにちっちゃいという歳ではないはずなのだが、そこは見た目がティーンにしか見えない目の前のイギリスを見ていると、そんな気持ちがわきあがってくる。
…ていうか…こんな子どもに無理に性的な事押し付けたらめっちゃ犯罪やん。
ペド分と噂されペドフィリア扱いされているスペインではあるが、子どもは好きだが別に性的対象に見ているわけでは当然無い。
子どもは愛でるものであって、害を与えてはならない。
そう、そんな事して可愛い可愛い子どもが愛でられなくなったら大変じゃないかっ!!!
そもそもこの子がこんな風に体調崩して熱出して倒れとるんはあいつらのせいやん。
ちょお仕置したるべきやわ。
国に何かあったら国体に影響するけど、逆はないやんな。
あいつらにちょっとばかり仕置したったって、別に国家としては構へんやんな。
親分なにか間違っとったわ。
逃げてちゃあかん。
とりあえず戦わな!
何かプツっと切れてはいけない物が切れ、押されてはいけない――おそらく親分スイッチとかそういう類の――スイッチが押されてしまったらしい。
「絶対親分が守ったるからな。どんな事しても守ったるで?」
点滴をした自分より一回り小さな白い手を握ってそう語りかけるスペインの目は、もう明るく暢気なそれではなく、かつて世界を相手に南イタリアを守って守って守りきった親分の目に戻っていた。
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