The escape from the crazy love_3_3

決意

――さあて…これからどないしよ……

熟睡中のイギリスの隣に自分も横たわりながら、スペインは考えた。


ここにいる間はおそらくフランスにもアメリカにも気づかれないだろうが、ずっとそうして逃げているわけにもいかない。

しかし、性的な意味合いではイギリスはまだ他者との接触に慣れない子どもなのだ、それを考慮して接してやってくれと言っても、フランスはとにかくアメリカには受け入れてもらえないことは必至で…たぶんフランスは急激にイギリスに接近しようとするアメリカに焦って引きずられる。

そしてこの二人を向こうに回してもイギリスを守ってやる気があって、実際に守れる力のあるやつなんているのだろうか…。


そう考えると、強くなったら誰にも害されなくなると小さな身体でなりふり構わず目一杯がんばって一時は世界の覇権国家まで上り詰めたのに、いまだ大国の理不尽な欲求に振り回されるこの小さな小さな島国が哀れに思えた。


――本格的に矢面に立ったらやばいかなぁ……

アメリカですら盗聴器をしかけるのに仕事関係の情報がやりとりされる可能性のある書斎やリビングを避けたというから、公私混同はしないのだろうが、私的な部分だけでも厄介なことには変わりない。

そう、むしろ公私混同しない分、国際問題的に上司は介入することを極力避けるし、しかし個人のレベルでやばくなれば外国の要人というヴェールの中に逃げるのだから、質が悪い。

そんな面倒事に関わっていられるほどスペイン自身余裕があるかと言われれば、ないと答えるしかない。

なんとか完全に渦中の人になるのを避けつつ、それでも最悪な自体から守ってやるには…と、久々にスペインが頭を使っていると、薄暗闇の中でクスンクスンと小さく鼻を啜る音がする。


「アーティ、目覚めたんか?」
と、そちらに目を向けても目を開ける気配がない。

どうやら怖い夢でも見ているらしい。

少しでも身を隠そうとでもしているかのように身体を丸め、声を殺して泣く様子が痛々しくて、スペインはその頭を引き寄せ、また自分の左胸に押し当てて心臓の音を聞かせつつ、

「大丈夫、大丈夫やで。
親分がちゃんと守ったるからな。
なあにも心配することないんやで?」
と、背中をポンポンと叩いてささやいてやる。

――あ~、もうしゃあないわ。俺親分やしな…。

これも寝ているので無意識なのだろう。
その言葉にきゅっとスペインのパジャマの胸元を掴んでくる手に、スペインは諦めと共に決意する。



懐にいれてしまったものは最後まできちんと面倒を見て守ってやる…それが親分というものなのだ…と。





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