The escape from the crazy love_1_4

『もしもし、こんな時間に悪いね』
ヘラリという言葉は毎度おなじみで、スペインも
「まったくや。今度来る時にワイン1ダースでええわ」
と、これもいつもどおり返すが、
『お前は全く…』
と、フランスは電話の向こうでため息をついたあと、

『ところでさ、まさかとは思うんだけど、そっちに坊ちゃん行ってない?』
と、聞いてきた。
ほんの一瞬スペインは迷うが、即決断する。

「来たで~。せやけど仲良うもない奴にいきなり来られても困るやん?
せやからドア開けんまま、いきなり来られても迷惑やし用があるなら秘書通したって言うたら帰っていったんやけど…あれどないしてん?自分なんか知っとるん?」

助けると言ってしまったからには簡単に他を信用はできない。

たとえそれが自分の悪友で、イギリスにとっては一番くらいに縁が深い腐れ縁だったとしても…だ。

すると元々不仲として知られるスペインとイギリスの関係が前提にあるのかフランスはすっかり信じたらしい。

『お前…本当に坊ちゃんの事嫌いだよねぇ…』
と電話の向こうで苦笑したあと、

『うん、たいしたことじゃないから今いないんならいいんだ。
気にしないでよ。じゃあね』
と、こちらの質問には答えずに電話を切った。

盗聴器やGPSというのはまさかフランスなのか?
らしくない…実にらしくないと、スペインは長年の付き合いから思う。
機械とフランスというのはどうも結びつかない。

まあそのへんはイギリスの方に聞こう…と、スペインは家全体の戸締りを終えて、さあキッチンへ戻ろうか…と、思ったら、いきなりものすごい音がして、慌てて外へ出てみると、家の前になんと小型機がとまっている。

「やあ、スペイン。こんばんはなんだぞっ☆」

幸いここは畑仕事をしたいがために選んだ校外の一軒家で…家の前の道路も広くそこを滑走路に着地したらしく、騒音以外の実害はない。

――ああ、こいつか…
スペインは内心思うものの、隠したいモノがある時は逆に目立った行動を取るのが良い。

「もうっ、自分らなんなん?!兄弟して親分の平和な日常を乱すのやめてんかっ!!」
と、不機嫌な顔をしてみせた。

「え?!やっぱりイギリスこっちに来たのかいっ?!」
と、即食いつくアメリカ。

「あ~来たでっ!数時間も前やったか。
即、ちゃんと秘書通してアポいれたってって言うて追い返したったけど。
親分いま休暇中でプライベートな時間やのに、アポ無しで押しかけとか勘弁してやっ!」

「どこへ向かったかわかるかいっ?!」
わざと怒った風に言えば、そんなスペインを無視して聞いてくるアメリカ。

さすがKYオブKYだ。

「そんなん親分が知るかいっ!!
フランスんとことかで聞いたほうが早いんちゃう?!」

「フランスのとこならもう行ったんだぞっ!
じゃ、おじゃましたねっ!!」
と、こちらもスペインとイギリスの不仲が思い切り頭にあるせいかあっさり信じてまた自家用機に乗り込んで慌ただしく飛んでいく。

「…ったく…どうなっとるんや」
呆然とそれを見送るスペイン。

――あ…今の音で怯えとるかもしれへんな…

と、そこでふと気づき、飛行機が遠ざかって見えなくなったのを確認すると、家の中へと帰っていった。




0 件のコメント :

コメントを投稿