「自分ホンマどないしたん?
泣いとらんで親分に話してみ?」
そう言ってなだめるように背中をポンポンと叩いてやると、イギリスはまだしゃくりをあげながら
――助けろ……
という。
「何があったのかわからんかったら助けようないやん?
助けたるから何があったのか話してみ?」
助けてやる…なんて軽々しく言うものでもなければ言わなければならない相手でもない。
そうは思うのだが、童顔に幼さを全開の表情でこんなに心細げにすがられると、自他共に認める子ども好きの親分としては放ってもおけない。
というか…今更気づいたのだが、いつもはきっちりスーツに身を包んでいるはずの英国紳士が、今日は綿シャツにジーンズという珍しい出で立ちで、いつもより数倍幼く感じていたのはだからなのか…と、思った。
もう自分を巻き込もうとしてこの格好なら随分とあざといと思ったのだが、そんな余裕があるようにも見えない。
何から話していいかわからないといった風なイギリスに、とりあえずその珍しい服装のわけを聞いてみると、とんでもない答えが返ってきた。
――念のため…盗聴器やGPSとかがとりつけられないように、普段自分が利用しないような店に入って服を全部新しくして、それまで着てた服を全部捨ててきた…。
へ?
さすがに発想の斜め上を行き過ぎた答えにスペインは呆然とする。
「ちょお待って!自分なんか追われとるん?」
そう言いながらスペインは立ち上がると、窓に駆け寄り、誰も居ないことを確認すると、サッと窓とカーテンを閉めた。
そのままイギリスの腕を取ると、飲み終わったマグカップを二つ片手に持ってキッチンへ向かう。
そして床板を外してイギリスと下にある食料貯蔵庫へ。
「ちょお親分戸締りしてから話聞いたるからここで待っとき」
腐っても長い歴史の中、他国との戦争も内戦も多数経験してきた古参の元軍事国家だ。
非常時に際しての切り替えは早い。
そう言い置いて自分は上に戻ろうとするスペインにイギリスは必死にしがみついた。
「やだっ!1人にすんなっ!」
ポロポロ泣きながらすがる様子は本当に親に置いていかれそうになって泣く子どもそのもので…突き放す事ができずにスペインは苦笑してその黄色の頭を撫でてやる。
「大丈夫。すぐ戻ってくるから。
助けたるって親分言うたろ?嘘はつかへんよ。
まず自分が来た痕跡消さなあかんから、自分が乗ってきたバイクを納屋に隠したあと、戸締りして戻ってくるから。
一応な、親分やったら3回床板ノックしたあとここに入ってくるから。
それ以外で床板開きそうになったら、この食料庫は奥行けば裏の畑の納屋につながっとるから、奥へ逃げ?
大丈夫。ホンマすぐや」
なんで自分がイギリスのためにここまでしているのだろうと思わないでもないが、いつのまにか乗りかかってしまった船だ。
スペインは説明をするとソっとしがみつくイギリスの手を外し、それからまた一度軽くその頭を撫でてやるとキッチンへ戻って床板を閉めた。
その後、イギリスに話した通り外へ行き、鍵がついたままドアの側に停めてあったバイクを納屋へ移動。
家に戻ってドアの鍵を閉めたあたりで電話がなった。
「もしもし~?親分やで?」
何か今回の事に関係があるのだろうか…と思いつつも普通に出てみると、なんのことはない、フランスだ。
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