The escape from the crazy love_1_1

「たのむっ!今晩泊めてくれ!」


玄関のチャイムが鳴った時には夜の9時を回っていた。

来客のアポなど当然入ってないし、不思議に思ってインターホン越しに覗いてみれば、そこに映っていたのは目を疑うような人物だった。



イギリス…かつて自分を覇権から蹴落とした相手…。

周りからは犬猿の仲と思われている相手である。


しかし実は国同士としては若干領土問題など残ってはいるが同じEUになってからはそれほど険悪なわけでもなく、個人としても他国に知れ渡っているほどスペイン自身は遺恨を残しているわけではないが、かと言ってアポ無しでいきなり泊めるような仲でもない。


まあハッキリ言ってしまえば良くも悪くも興味のない相手だ。


そのイギリスが何故自分の家に?
当然そんな疑問が脳裏をよぎるわけだが、真っ青な顔でキャンディのようにくるりと丸い大きく澄んだグリーンアイに涙をいっぱい浮かべて開けてくれと頼まれれば、それを無碍に追い返したりも出来ず、スペインは訝しげに、それでもドアを開ける。


これやから童顔は卑怯くさいわ…などと、思いながら…。



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