気が付いたらソファの上。
ブランケットが上からかけられていた。
「おう、起きたか~。
今、アーニーのミルクやってるから、終わったら大人の飯な。
温め直せばすぐ食えるから、ちょっと待っててくれ」
と、すぐ側の椅子でアーニーにミルクをやりながら言うギルベルト。
ついさっき初めて会った赤の他人だと言うのに、そこに彼が1人いるというだけで、昨日までの心細さ、寒々しさが嘘のように温かい。
「よ~し、良い子で飲んだな。おむつ替えてすっきりしような~」
と、ギルはにこやかに赤ん坊に話かけながら、アフガンを広げてそこに赤ん坊を寝かせると、手早くおむつを替えてやって、すっきりした顔のアーニーを
「ちょっと抱いててやってくれ。飯の準備するから」
と、アーサーに手渡してきた。
お腹がいっぱいでおむつもすっきり。
周りの大人の精神状態も安定していて安心感があるのだろうか…
先ほどまでと違ってアーサーの腕の中でもご機嫌な様子のアーニー。
あぶあぶ言いながら小さな手をアーサーの顔に伸ばして来る姿は愛らしい。
「ははっ。アーニー、お前可愛いな」
と、思わずアーサーが笑いかけると、にこぉっと目や口元が笑みの形を作る。
「笑ったっ!!」
アーサーは驚いて声をあげた。
あれほど悲しそうに泣いてばかりいた赤ん坊が、上機嫌でわらっている。
その様子に不思議なくらい気持ちが軽くなった。
「ん~。早い奴だと1カ月くらいで笑うぞ。
アーニーは2カ月くらいか?」
と、パスタやサラダの皿をリビングのローテーブルに並べつつ言うギルベルト。
本当にそこにいるのが当たり前に思えるのが不思議である。
決してパーソナルスペースが狭くはない、人見知りのアーサーに全く緊張させる事なく場に馴染めるなんて、すごい人物だと改めて思った。
――越してきたばかりだからあり合わせのモンしかなくて悪いな。
と、言う食事だって、ガーリックトーストにパスタにサラダにスープは全部手作りで、日々コンビニの弁当で済ませているアーサーからすると御馳走だ。
その良い匂いに昨日から食べることを忘れていたアーサーの腹は一気に何も胃に入っていない事を思い出したらしい。ぐぅ~っと大きく鳴った。
その音にギルベルトはちょっと目を丸くして、そして次に
「少しは元気になって来たかっ」
と、優しく笑って頭を撫でてくれる。
こうしてだいぶ落ち着いたアーサー達だったが、それでもギルベルトはその夜は心配だからと布団を持ってきて泊まってくれ、翌日からの手続きやらアーニーに必要な物の買い物やらを手伝ってくれたのであった。
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