そこでそれまで美形エリートイクメンにほぉぉ~と感心していたアーサーは、一気に現実に引き戻された。
そうだ、感心している場合じゃない。
アーサーはこれから弟と2人きりで生きて行かないとならないのだ。
あまりに現実離れした隣人、ギルベルトの華やかさや安定感にすっかり忘れていたが、現実は変わらない。
今は泣きやんでいる弟も、ギルベルトが帰ってアーサーと2人きりになればまた悲しげに泣きだすのだろう…そう思ったらまた性懲りもなく涙があふれて来た。
話しているうちにどうしようもなく心細く悲しくなってきて、最後はシャクリをあげて言葉に詰まるアーサーに、ギルベルトはびっくりしたようだったが、すぐに赤ん坊を抱きしめたまま泣くアーサーを赤ん坊ごと抱きしめてくれる。
――うん…まあ…大変だったな。自分の面倒だけでもどうしよう状態なのに、心細かったよな…
ああ、そうだ、この言葉だ。
ポンポンと宥めるように背を軽く叩きながらそう言ってくれる言葉に、少し悲しさが癒されていく。
次いで聞かれる
――えっと…今後頼れる当てとかはあるのか?
という言葉に首を横に振ると、アーサーはコツンと自分の頭をその厚い胸板に預けた。
今だけ…今だけでも良いから、少しでも良いから誰かに寄りかかりたかった。
しかし…そこであり得ない言葉が降って来た。
――わかったっ!俺様が一緒に面倒見てやるよ。こう見えても育児はプロだ。任せとけっ!
「はぁ??」
え?え?なんで?何故そうなる??
両親の事故死の知らせを受けた一昨日からずっと色々現実感がなかった。
あまりに一気にふりかかってくる不幸、不安。
それが急に覆されるような言葉に、今度は別の意味で現実とは思えず、アーサーはびっくり眼でギルベルトを見あげる事しか出来ない。
そんなアーサーに、大丈夫、これが現実だ!と言わんばかりに、しっかりとしたおおきな手で頭を撫でながら、
「子育てを終えた子育て経験者が今子育ての手が必要な奴の隣に越してきたってのは、いわゆる神様のお導きだ。素直に従っておけ」
と言うギルベルトに、緊張に張り詰めていた糸が一気にほどけた。
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