赤ん坊狂想曲7

…疲れた……

普通なら親の葬式だけでも十分疲れるし、落ち込むものだ。
しかしアーサーには落ち込んでいる暇さえない。
何もできない赤ん坊の面倒をみてやらねば…

まず赤ん坊が眠っているうちにミルク用の電気ポットをセット。
そしてネットで色々調べてみる。

(ふんふん…母乳に足りないのはビタミンKで…K2シロップ?薬局に売ってるかな?
いや、キャベツに含まれてるのか…ビタミンK…。
家にキャベツあったっけ…)

よくわからない上に疲れている中で適当に字面だけ追う情報…。
ビタミンKが足りないのは母乳であって粉ミルクではない。
そんな事すら読みとれず、疲れきってぼ~っとした頭で冷蔵庫を探ると、見つかったのは紫キャベツ。

(…これもキャベツだから…いっか…)
と、取りだして、ふと考えた。
赤ん坊は歯が生えてない。
かじれない…

………
………
…ミキサー使うか……

それを迷わずハンドミキサーに放り込み、ついでに栄養がありそうなので人参も放り込む。
そして…粉ミルクを半分お湯で半分その液体をいれて溶かした。

そうしてミルクが出来た頃、ちょうど寝ていた赤ん坊が目を覚まして泣きだしたので、哺乳瓶を持って駆け寄る。


「ごめんな。大丈夫。お前は俺がちゃんと守ってやるから…」

事情なんてわかっているとは思えないが、あまりに悲しそうに泣いている赤ん坊を見て、自分も唯一残った父親が亡くなって弟とこの世に2人きりになった事に今更ながら気づいて、アーサーも悲しくなってきた。

大丈夫…なんて誰が言える?
言えるほど自分は強いのか……?

自分の身一つだってどうすればいいかなんて自信はない。
それでもアーサー1人なら…このマンションは叔母が確保してくれた本来は全くもらえないはずだった実母側の遺産で購入した物でローンなどもないし、成績だけは良かったのでスキップして入った大学は来年卒業だが、学費は給付型奨学金が出ていた。

そのあとは…就職すれば自分1人が食べて行くくらいの食費と光熱費くらいはまかなえるだろうし、生きてはいけるだろう…。

でも…弟はどうする?
これから保育園だって探さないといけないし、なにより小学校、中学校、高校、大学と出さなければならない。
その学費は?
それ以前に、自分が学校に行っている間はどうすればいい?

自分が育てるから…と引き取ってはきたものの、何から手をつけたら良いのか、どうしたらいいのか、わからない。



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