ミルクを飲んでお腹いっぱいになると当たり前に排泄をする赤ん坊のおむつを替えてやって、頭を左側、心臓のあたりにくるように横抱きにして軽く背を叩いてやると、赤ん坊自身も泣いて疲れたのか、すやすやと眠り始めた。
眉毛こそ妙に立派でコミカルだが、真っ白な肌にふっくらとした頬の実に可愛らしい顔をしている。
それでもふわふわとした柔らかさ、鼻や唇、手や足など、パーツが驚くほど小さいところなど、赤ん坊としての特色は変わらない。
片手で抱きかかえて、そのぷにっとした手のひらをつんつんと突いてやると、ふっくらと柔らかい手が無意識にぎゅうっと指を掴んでくる様子の愛らしさ。
(ちきしょ~!可愛いじゃねえか…)
と、思わず顔がほころんだ。
掴まれた指を小さく動かしていると、まるまっこい大福のような手が釣られて動くのを見ているだけで楽しくて、あっという間に3時間。
ふあぁ…と先に大あくびと共に目を覚ましたのは赤ん坊の方だった。
…あ~ぅ…
と母親と同じ大きくまんまるのグリーンアイでギルベルトを見あげてきて、小さな手を伸ばして来る。
「おはようさん。腹減ったか?」
と口元をきちんと消毒した指でつつけば、何か口にしたいと思っていたのを思い出したように、まだ歯のない口でちゅうちゅう吸ってくる。
「あ~…聞くまでもなかったか。
ちょっと待ってな。今ミルク作ってやるから」
と、母親が眠っているソファの側に置いてあったクーファンに寝かせようとすると、降ろしたとたんに、ぴえぇぇ…と泣き出す赤ん坊。
その声にハッとしたように母親が目を覚ました。
「おう。どうだ?少しは眠れたか?」
まだ半分目が覚めていないのか状況をつかめないのだろう。
驚いたようにあたりを見回す、自分の方がまだ幼い感じがする母親を驚かせないように声をかけてやると、ぽかんと赤ん坊にそっくりな大きくまんまるなグリーンアイがギルベルトを見あげた。
パチパチと瞬き2回。
「あああーーーー!!!!」
と、突然記憶が繋がったのだろう。
焦ったように声をあげる。
「ごめんっ!ごめんなさいっ!!
見ず知らずの人にっ!!!」
オロオロとする様子が可愛らしくて、ギルベルトはいったん泣く赤ん坊をクーファンから抱き上げてあやしつつ、ペタンとソファに座り込んでいる母親に視線を合わせるように、その前に膝をついた。
「ギル…な?ギルベルト・バイルシュミット。
この隣、502号室に越してきたリーマンだ。
お姫さんはなんて呼んだらいい?」
状況が状況だ。
なるべく怖がらせないように、出来うる限りの優しい笑顔を作ってそう言うと、目の前のまだ下手をすればミドルティーンに見える母親は、少し眉を寄せて考え込む。
「…お姫さん…て…俺の事ですか?」
「…へ?」
「俺はアーサー。アーサー・カークランド。
赤ん坊はアーニ―。アーネスト・カークランド。
俺の弟です」
「お、おとこぉぉ~~?!!!!」
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