それはニューイヤーズパーティの時の事である。
多数の財閥の総帥などが集まった盛大なもので、その出席者の中には王同様、父の生前にアルの自宅に遊びに来ていた友人達も多数いて、アルの様子をみたいという話が出たので王に連れて行かれた。
最初のうちは懐かしんで、または元気そうな様子に安堵して構ってくれたのだが、皆仕事関係の相手に捕まり始めてアルに構う時間がなくなり、退屈になったアルはそっと会場を抜け出して庭に出た。
しかし金持ちが集まる所にはまた、それを狙う輩も集まりやすい。
この時もどうやら警備が手薄になっていた庭に入りこんでいた良からぬ輩にアルはいきなり銃を突きつけられた。
ああ…王に迷惑をかける…と、まず思った。
それから…どうしよう…と。
そんな時、いきなり何かが飛んできた。
暴漢の眉間にヒットして落ちたそれを拾ってみると、銀の十字架。
「…っこっの~~!!!!」
低い姿勢で素早く近づいてくる何かに向かって、我に返った暴漢が発砲する。
が、あり得ない事にそれをものすごい素早い動きで避けたかと思うと、黒いタキシードに包まれた足が間合いに入った暴漢の手にヒットして銃を蹴り飛ばした。
「お前っ!俺様から離れんなよっ?!!」
と、言いつつ飛びのいて蹴り飛ばした銃を空中で受け止めると、おそらく中学生か高校生くらいであろうその少年は、アルの腕をグイっと掴んで自分の後ろにかばうと、暴漢に向けて銃を構えた。
月明かりに光る銀色の髪。
珍しい真紅の目が鋭い光を放って暴漢を睨みつけている。
(Cooool――――!!!!!!)
それはまさにアル自身がそうありたいと思っていたままのヒーローの姿で、こんな事態になっているのに、アルの脳内は大興奮だった。
結局銃声を聞いたガードマン達が集まってきて暴漢は御用。
完全に安全になった所でアルは駈けつけた王にそれはそれは大目玉をくらった。
だが、それでもめげずに助けてくれた少年について根掘り葉掘り聞くので、王が呆れかえりながら教えてくれた少年の名はギルベルト・バイルシュミット。
ヨーロッパの貴族の血を引く資産家の長男だと言う事だった。
それ以来、彼はアルのヒーローで目標でもあった。
そんな彼だから中学生で選ばれると言う寮長に次ぐ権力者なのであろう副寮長に選ばれるのは実に納得出来る事だった。
彼のようになりたい…は、そのうち彼の歩いた道を辿りたい…になり、アルがそれを王に言うと、王はシャマシューク学園中等部への入学手続きを取ってくれた。
「…でも外部生だと人脈ないし、副寮長に選ばれるのも難しいんだぞ」
と言うアルに対して
「そんなに良いもんじゃないあるが……
なりたいなら、我の人脈でなんとかしてやるある。
でも副寮長は寮の顔あるからな?
なったら誰しもに認められるような副寮長になるあるよ?」
とさえ言ってくれたのだ。
もちろんっ!自分はギルベルトのようにクールでカッコいい副寮長として名を馳せるのだ!!
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