ぺなるてぃ・らぶ_Verぷえ_7(完)

こうして自国でのフランスとの2国間会議。

あれこれ聞かれるの嫌さにギリギリに会議室入りをすると、イギリスは早々に議題に取りかかる。

今日入らなくてもいずれはチェックが入るのだろうが、なるべく先送りしたい。
そんな気分で淡々と仕事をこなし、互いの秘書に続いて早々に退出しようと急いで鞄に持ち帰る書類をしまい終わったところで、とうとうフランスから

「坊ちゃん、この前の賭けどうなったよ?」
と、声をかけられてしまった。


あ~、やっぱり来たか…

勝負を受けた当初はOKをもらうと言う事が出来ないかもと言う事が恥ずかしかったが、今は別の意味で恥ずかしい。
かといって本当は出来たのに、出来なかったというのも変な話だし、腹も立つ。

「…あ…あれなっ……」

突っ込むなよ、深く突っ込みやがったら殺すっ!
そう思いながらイギリスは口を開いた。

そう、自分だって告白してOKをもらう事くらいできるんだ。
できたんだから別に胸を張ってそう告げれば良い……

そうは思うモノの、やっぱり恥ずかしい。

「…こ、こいびと……できた……らしい……
と、堂々と言ったつもりが語尾がついつい小さくなる。

「へ???」
と、それに対してのフランスの返答。

返答があったというか…反応された事にイギリスは思い切り動揺した。

「…一緒に暮らしてる……っていうか……今日も付いて来てるっていうか……
あ、違うぞっ!最後まではやってないからなっ!!
そういう事はちゃんと籍いれてからってあいつが……」

もう動揺しすぎて聞かれてもいない、言わないで良い事までとにかく口早に言ってしまって、口にした瞬間に後悔をする。

ああ!!そんな事言わなきゃ良いのに言っちまったっ!!!

わざわざフランスにからかうネタを提供した事に気づいて、頭が真っ白になって、泣きそうになった…というか、実際に涙目になった。

もうダメだ、どうしようっ!!と、頭を抱えたくなって、でもどうして良いかわからず言葉に詰まるが、イギリスの馬鹿さ加減に呆れたのだろうか…
幸いにしてフランスはぽか~んと口を開けて呆けたまま、まだそれ以上の突っ込みをいれて来ない。

いや…でも時間の問題だよな、これ…と、イギリスが羞恥のあまり死にたくなったその瞬間……

コンコンと会議室のドアがノックされる音と共にドアの向こうから聞こえる
――もう終わったか?
と言う頼もしい声。

助かったっ!これで大丈夫だ……

イギリスは瞬時に胸をなでおろした。
何故そこまで信用出来てしまうのか、自分でもわからない。

でもプロイセンはきっとイギリスを全身全霊で守ってくれる、フランスがひどくからかって来てもなんとでも守ってくれる…そんな風に思ってしまうイギリスがいた。


プロイセンの声で我に返ったのだろう。
フランスが駆けだして、飛びつくようにドアを開けた。


「プーちゃん、なんでここに?!」
と、まあもっともな質問をする。

それに対してプロイセンが極々当たり前の事のように、
「ん~、イギリスを迎えに?」
と答えると、フランスはまた
「へ??」
と、呆けた。

「なんで?」
「ん?なんでって…大切な恋人様を迎えに来ちゃ悪いか?」
すいっとさりげなくイギリスの横に立つプロイセン。

「………」

目を丸くするフランス。
そして沈黙……少し考え込み…理解したらしい。

「あーーー、そういうことっ?!」
と、苦笑した。


「プーちゃん巻き込んでごめんね。
お兄さんが坊ちゃんに無茶言ったのが悪かった。
実はね、坊ちゃんがどう言ったかわからないけど、これ罰ゲームなのよ」

クスクス笑いだすフランスに、イギリスは今更ながら思い出して青くなった。

そうだ、元々は罰ゲームだった。
いや、そんな事すっかり忘れて普通に付き合っているつもりだったのだが、プロイセンにしてみれば、随分と失礼な話だし、騙されたと思って怒っても仕方ない。

「…ぷろいせ……ちが……違って……」
言葉が上手く出てこない。
青くなって首を横に振るイギリスに、しかしプロイセンはいつものように優しく微笑んで

「わかってるって。
きっかけはとにかくとして、アルトは気持ちもないのに身体許したりしねえだろ」
と、ちゅっと額に口づけを落とす。

全く動じない。
欠片も揺らぐ様子を見せない。
すごい……と、イギリスは本気で感心した。


「え?ええ??あの…プーちゃん??」
むしろ動揺しているのはフランスの方だ。

イギリスからすれば何故こいつが動揺する?と思わないでもないのだが…
そこまでイギリスが窮地に立たされるのを見たかったのだろうか…と思うと、腹が立つ。

ぷくりと膨れて、きゅっとプロイセンのジャケットの端を握り締めると、プロイセンは小さく笑ってイギリスの頭を軽く撫で、それからフランスを向き直った。

「お前…絶対騙されてると思うんだけど……
あのね、坊ちゃんはお兄さんと賭けをして負けて、誰か国に告白してOKもらってくるって罰ゲームをしてたのっ。
で、日本やポルトガル、それに英連邦とか、頼めば同情してOKしてくれそうなあたりはNGって事だったから、お前に白羽の矢が立ったんだと思うんだけど……」

改めてそう説明するフランスだが、プロイセンはやっぱり動じない。

「おう、なんか罰ゲームうんぬんはとにかく、そんな話は聞いた気ぃするけどな。
それでも俺様はOKして、改めて俺様の方からちゃんとイギリスに交際申し込んだし、イギリスもそれにOK出してくれて、今現在、一緒に暮らしながら結婚を前提として交際中だから、別になんにも問題ねえだろ」

そう言ってイギリスの手を取ると、もう片方の自分の手と一緒にフランスの方にかざす。
その指にはしっかりとハマっている互いの色合いのペアリング。

「…ってことでな、俺様達これからデートがてら食事だから。
積もる話はまた今度な?」
と、にこやかにそう宣言すると、プロイセンは掴んでいたイギリスの手をさりげなく自分の腕に誘導して、

「行こうぜ?」
と、誘導した。



パタンと閉まるドア…。
いつものように手を取られて歩きながら、イギリスは言葉を探している。

フランスの手前プロイセンは何も言わなかったが、考えてみれば非常に理性の強い男だ。
実は怒っている…とかないのだろうか……。


それを示すように駐車場に向かって歩く間、プロイセンは無言である。
いつも賑やかに語る男が無言…その沈黙が恐ろしい。


駐車場について当たり前に助手席のドアを開けられて、いつものように助手席に乗り込むと、ドアを閉められる。

そうして運転席に回り込んで乗り込むプロイセン。
そこでドアを閉めるとこちらを向いて、

「なんて顔してんだよ、俺様のお姫さんは」
と、苦笑しながら頭を撫でて来た。


柔らかな表情。
いつもと変わらない口調。
それにホッとしすぎてホロリと涙が零れ落ちたイギリスに、泣~くな~~と、また笑うと、プロイセンはイギリスの頭を自分の方へと引き寄せた。

「あのなぁ…イギリスがどういう目的で言ったにせよ、OKだしたのは俺様だぜ?
どれだけ甘い言葉を並べられようと、自分の側にその気がなければOKなんて出すような奴じゃねえよ、俺様は。
だからイギリスの告白にOKだしたのは俺様の自己責任。
でもその後に結婚を前提にした交際に対してOKだしたのはイギリスの自己責任。
互いに一緒になる事に満足してんだったら、なんにも問題ねえだろ?ん?」

こつんと額を軽くぶつけてそういうプロイセンに、涙をぬぐってコクコクとイギリスが頷くと、
「じゃ、飯食いにいくぜ~!」
と、プロイセンは前を向いてエンジンをかけた。


そして夜の街を恋人達を乗せた車が走り抜けて行くのだった。




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