恋人様は駆け込み寺_1章_1

「無理…お前とは本当に付き合えない。」

もう何回この言葉を繰り返しただろう。
相手は2歳年上の幼なじみだ。
小さい頃は虚弱だったので、この幼なじみには随分と世話になったと思う。
いつでも当たり前に庇ってくれたし、重い荷物とかだって当たり前に持ってくれた。

他に言わせると遅刻魔らしいが、アーサーとの待ち合わせにはいつも早めに来るか、そうでなければ迎えにくる。

そうやって何でもしてくれておいて、アーサーの側には何かを求める事もしなかった。
いや、アーサーが幼稚舎から大学まで一貫校のこの学校の高等部に進学したここ半年くらい、付き合ってくれと言う以外は…か。

「何度も言ってるけど、そういう目でお前を見たこと無いし、見れない。」
と言っても、
「今更それはないんちゃう?そういう目で見たこと無いなら付き合ってみればええやん。」
と返される。

普段ぼ~っとしているのに、変なところでポジティブで粘り強い。
思えば人見知りでどちらかと言うと人嫌いだったアーサーがこの男だけは側にいるのに慣れてしまったのも、この妙な根気強さのせいだったかもしれない。

そう、相手は男、アーサーも男だ。
しかし男だらけの男子校でそんな事はさして珍しくもなく、アーサーがこの男を断固として拒絶するのもそれが原因ではない。

ハッキリ言ってしまえばアーサーだってこの男と一緒だ。
告白こそしていないものの、すれば断られ続けるであろう片思いの相手がいる。
だから付き合えない。

正直、今までこの男の様々な誘いを強く断れなかったのだって、そこにある。
顔が似ているのだ…片思いの相手に。
性格はもっと明るくて友人も多くて、あちらは絶対にアーサーの事など振り向いてはくれないだろうという事もわかっていて、顔だけ見ていれば面影のあるこの男を敢えて突き放さずいた自分もえげつないという自覚はある。
しかしこれ以上の惰性での接近はダメだと思う。
今でも自分が悪いのに、想い人と顔が似ていてそのくせ性格が真逆なこの男にイラっと来て理不尽に当たる事があるのだ。
惰性で付き合うなんて形を取ったら自分がどれだけひどい事をするかわからない。
以前にそれも言ったのだが、それでも良いと返されて途方にくれる。

どうしたら諦めてくれるのか…と、もう数ヶ月も続くこの押し問答にもいい加減疲れてきた。
その日もとにかく無理っ!と振りきって、日直だったので担任に日誌を届けに職員室へと向かった。






0 件のコメント :

コメントを投稿