ぺなるてぃ・らぶ_Verぷえ_3

プロイセンにはずっと好きな相手がいた。

容姿は可愛いのにひたむきで頑張りやで…いつも気を張り詰めているようなところがあって…気が強そうなのにポキンと折れてしまいそうな脆さを感じる。
そんなところが元々騎士団育ちで守りたい系のプロイセンの庇護欲をひどく刺激した。

本当に外見も中身も好みのど真ん中を貫いていて全てが完璧だった。
ただ一点を除いては……そう、相手はおそらく好きな相手がいて、そういう意味ではプロイセンを好きにならないという、もうどうしようもない一点を除いては…だ。

相手にはおそらく好きな奴がいる。
海を挟んだ隣国。
プロイセンが生まれるずっと前からの付き合いで、プロイセンの片想いの相手…イギリスが出会った当初はお姫様のように美しかったらしい。
もちろんいまだって成長して男らしくなったため傾向は変わったが美しい。
武骨な軍国なんかと違って、いつの時代もファッションの先端を行く国だった。

いつも喧嘩ばかり…なのに離れない。
悲しいかな、プロイセンが生まれた時にはすでに彼らはそんな関係だった。

…いつもいつも嫌な事言われて泣くくらいなら、俺様にしとけよ…
何度そう思ったかわかりはしない。

それでも…イギリスが奴を好きならば、自分の気持ちを押し付けて気をわずらわせたくなかった。
だから言わない。

でもせめて…せめて、傷ついて泣きたくなった時に、彼の支え、彼の逃げ場になれたなら…それがプロイセンのささやかな望みの全てだった。


こうして片想い歴数百年を経て…途中国的に少しやらかして自由を失くして、でも色々あって国と言う形のモノを失って亡国となったものの消えず、ありえないほどの自由を得た今、かねてからの野望を達成すべく、イギリスに接触を試みるようになった。

最初は昼食を食べに行って…その食物兵器に返り討ちにあって…それでもめげずに、料理を教えるから、美味しい菓子を焼いたからと自分の方から足しげくイギリス邸に通う日々。

もちろんそうやって自分は通うのだから、イギリスの方も気軽に自分の家に来てもらって構わないと何度も繰り返し言ったのだが、弟と一緒に住んでいるのもあるのか、遠慮して来てくれない。

まあ…いずれ…そう、いずれフランスの家を訪れる程度に気軽に来てくれれば良いなと思いつつ、プロイセンはイギリス邸に通い続けた。

そんなある日の事である。

その日は弟のドイツは仕事でフランスと二国間会議。
その後はイタリアに寄って休日を共に過ごすと言う。

犬がいるので、どうしても2人して家を空けなければならない時はペットホテルへ預けるが、だいたいはどちらかが泊まりの時は出来る限りはどちらかが自宅で犬の世話をするのが暗黙の了解になっていたので、今回はプロイセンは1人楽しすぎるお留守番。

最近は休日はプロイセンが渡英する事が多く、弟もデートはしばしばドイツでだったので、たまにはイタリアの街でゆっくりしたい時もあるだろうと、快く送り出し、久々に1人の休日を過ごす。


(…あ~…イギリスいまごろどうしてっかなぁ……)
ジョギングをしながらため息。

1人で行動するのは苦ではないタイプではあるが、1人でいるとやはり想い人の事が頭をよぎる。

これが…恋人とか言う関係なら、今日は弟が出かけていて留守番をしなければならないので渡独してくれとかも言えるのだが、なにしろただの片想い、ただの友人だ。
そこまで言える間柄とは言い難い。

自分が行かない休日はイギリスは何をして過ごしているのだろう。

綺麗な庭の手入れか、刺繍を刺しているか…
それとも…フランス邸に?
と、そこまで考えて、考えるのは止めよう…と、プロイセンは小さく首を横に振った。
自分が辛くなってくる。


(…来週末にイギリスん家に持ってくツマミのベーコンの仕込みでもすっか…)

プロイセンは気を取り直して、それはもうアポイントをいれてある来週末、そのまま泊めてもらう予定なので夜の宅呑みのツマミに持参するものを脳内でリストアップする。

最初はお茶、次は食事…そして最近は呑みも加わって、少しずつ打ち解けてきてくれていると思っていた。
会話の内容だって当たり障りのない仕事混じりのものから天気について、それから趣味、この頃は少しだけイギリスの他国に対する愚痴や落ち込んでいる事など、感情的な話も増えているので、きのおけない相談相手の地位までは登りつめたように感じてはいる。

(来週末を楽しみに…今日はあとでマーケットでも行くか…)

と、いつものジョギングコースを走り終わって自宅前。
そこに見える風景にプロイセンは自分の目を疑った。

自宅玄関の前にたたずむ黄色い頭。
何度か細い指をチャイムに伸ばしてはひっこめを繰り返している、ここにいるはずのないその人物は……

え?
自分はあまりに楽しみにしすぎて幻覚でも見ているのか?
ぱちくりと瞬き一つ。

しかし次の瞬間…ふらりと揺らぐ細い上半身。

――倒れるっ!!
と、戸惑いも疑念も全て吹っ飛んで、プロイセンは慌てて駆けだしてその身体を支えた。

「何やってんだっ!!」
と言っても虚ろな目で見あげるばかりのイギリスをプロイセンは迷う事なく抱きあげて、自宅へと招き入れた。





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