ぺなるてぃ・らぶ_Verぷえ_1

やめておけば良かった…いや、今からでも遅くない。

あのクソヒゲ殴って終わらせるか…。


プロイセン…もといドイツの自宅前。
フランスの情報によると今日はドイツはフランスとの2国間会議で渡仏中。
なので、時間はたくさんある。
プロイセン個人に話を持ちかけるには絶好のチャンスだ。

しかしイギリスはもうかれこれ1時間はチャイムを押すこともできず、ドアの前に立ち尽くしていた。





始まり


事の発端は二国間会議のあと、いつものようにそのままフランス宅になだれ込んで、二人でダラダラ酒を飲んだ。
 そうなるとしばしば始まるのが手慰みの賭け付きカードゲーム。
大抵はお互い良い酒を賭けたり食事を奢ったりで終わるのだが、その日は違った。
  
「ん~、お兄さんちょっとすぐ思いつかない。
でも今日勝てる気するんだよなぁ~。
罰ゲームはあとで考えていい?」

考えこむように天井に視線を向けてそう言うフランスの、いかにも自分が勝つとばかりの言い方が気に障った。
酔っていたのもあるのだろう。

「ハッ!考える必要なんてねえよっ無駄だから。
 今日は俺が勝つからなっ」

と、負けた時に何をさせられるかなど考えずにゲームを了承するなどという、迂闊な真似をしたのがそもそも間違いだったのだ。

結果…本当に負けた。


フランスも酔っていたのだろう。
罰ゲームの内容をうんうん唸りながら考えているのがまた気に障って

「もうなんでも良いから早くしろっ!!」
と、殴り倒したのも悪かったと思う。

しかもさらに

「…なんでも?」
と、イテテと殴られた頭をさすりながら涙目で見上げるフランスに、

「おうっ!だからさっさと決めろっ!」
と答えてしまったから最悪だ。

「ん~じゃあねぇ…誰か国に告白して、OKの返事もらってきて?
もちろん英連邦とかの身内に…とかズルはダメよ?
日本とポルトガルも同情してくれそうだし、禁止かな」
良い事を思いついたとばかりにニヨリと言うフランスをもう一度殴る。

「他人巻き込んでんじゃねえよっ!」
「え~、だって栄光ある孤立な坊ちゃんだし?大丈夫、絶対にOKされないから。」
で、もう一発。

アホらしい、で済まそうと思ったらそこで一言…

「ま、最初から無理って言うなら良いけど。坊ちゃん口説くのとか下手そうだし?
坊ちゃんに口説き落とされるようなチョロイ国がいたらお兄さん極上のワインで乾杯してあげちゃうよ?」



図星だからと言ってそこで認められるかどうかは別問題だ。
いや、図星だからこそ認められない。

そこでついつい、

「ハッ!国の1人くらい華麗に落としてやるよっ!
そしたら極上のワイン俺に寄越せよっ」

と、売り言葉に買い言葉だったわけだが……

冷静になって考えてみれば、英連邦や日本、ポルトガルを別にすれば、そんな話を出来そうな相手すらいない。

というか、なまじ国づきあいが良くない自分がいきなりそんな話をしたら、モロ怪しまれて、落とすどころか警戒されて距離を取られそうだ。

こんなことならもう少し他国と仲良く…とまでは行かないまでも、交流を持っておけばよかった。
英連邦でも日本でもポルトガルでもない、自分が実は好意を持っていたのだと言って信じてくれそうな程度に交流のある国……

考えすぎて眠れない。

眠れないのでメールの確認でも…とスマホを開いたところで表示されるブログの更新の知らせ。

――俺様ブログ……あ……こいつなら……

元軍国プロイセン。
現在は弟のドイツの補佐をしている亡国のブログに飛んで更新記事に目を通しながら、イギリスの腹は決まった。

元々わりあいと良好な関係を保っていたが、以前昼食を食べさせろと訪ねてきて倒れて以来、料理を教えるとか菓子を焼いたからとか、何かにつけて交流を持って来た相手である。

こいつなら好きになったんだ…と言って信じるだけの理由はあるんじゃないだろうか……


もし口説かれてくれたとして、その先どうなるか…などという事までは全くかんがえていなかった。

自分の事を口説き落とせる相手の1人もいない口説き下手と抜かしたフランスを出し抜きたい…
その事だけがイギリスの脳内の全てを占めていた。

そして…この時の軽率な行動をイギリスは後におおいに後悔する事になるのである。




こうして渡独してプロイセン宅の前。
チャイムを押そうと伸ばした手が宙をさすらう事数十回。
いや、100回くらいいっているかもしれない。

その日は本当にかんかん照りで、あまり暑さに強くないイギリスは暑さにクラクラしてきた。
もう数え切れないくらい繰り返した動作をまた繰り返しかけて、しかし膝から力が抜ける。
そしてチャイムから遠ざかっていく視界。

「何やってんだっ!!」

妙に現実感が薄れてきたその時に、落下する身体を支えたのは、この家の家主、プロイセンだった。


>>> Next  (1月9日0時公開)


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