恋人様は駆け込み寺_4章_4

…ん……んぅ……

小さな声に起きたのかと振り向けば、覚醒しかけているのか、むずかるように少し眉根を寄せる様子が可愛らしい。

そのまましばらく寝苦しそうにもぞもぞしていたが、やがてぱっちりと目を開けた。
まんまるのメロンキャンディのような目が不思議そうに空をみる。
パチパチとまばたきするたび、まるで人形のように綺麗なカーブを描いた長いまつげが日に透けて光り、きょとんとしていた顔から一転、…あ……と、小さな声を漏らすと、まだ少し丸みを帯びたあどけないさを感じさせる頬がぽぉっと赤く染まった。

それからびっくりした小動物のように飛び起きて、そこでようやくアントーニョの存在に気づいたらしい。
ぴゃっとでも言うように、ブランケットを胸元まで引き上げる仕草は、可愛すぎて同性とは思えない。

もうなにこれ、あれか?親分を殺しにかかってるんか?萌え殺しにかかってるんやな?とのた打ち回りそうになるくらい可愛い。

まあ、あれだ。ともすれば中学生になりたてか、下手をすれば小学生に見えてしまうくらいの童顔小柄な相手だから許される動作である。
これをフランシスあたりがやったら、間違いなくアントーニョの手の中のペンはその眉間を正確に狙ってなげつけられるに違いない。

そんなことを考えながら様子を見守っていると、アーサーの顔がますます赤くなり、ふるりと大きな目に涙が溢れてくる。

羞恥でいたたまれない…と言った風情だが、まあ今の状況から考えてそれはないだろう。
夢見でも悪かったのだろうか…と思って

「どないしたん?怖い夢でも見たん?」
と、声をかけつつ肩をポンと叩いたら飛び上がられた。

え?え?親分なんや怖がられてる??
その反応に少々ショックを受けていると、アーサーは真っ赤な顔のまま俯いて、消え入りそうな声で言った。

「…きがえ……」
「へ?着替え?」
「……フランのでいい………」
「あ~、寝汗でもかいてもうたん?
ほな、ちょっとデカイかもしれへんけど、新しいパジャマだしたるな~」
と、タンスに向かって反転しかけたアントーニョは、後ろからクン!とシャツを掴まれる感覚に足を止めた。

「……パンツ……」
ふるふると震えながら恥ずかしそうに言うその言葉で、アントーニョもようやく思い当たった。

「あ~、夢精でもしてもうたん?」
と、アントーニョ的には極々普通に言ったつもりなのだが、アーサーは耳まで真っ赤にして硬直する。

「いや、そんなに恥ずかしいことやないで~。よくあることや。
しばらく抜いとらんかったん?」
と、さらにフォローのつもりで言ったのだが、目の前の後輩は真っ赤な顔のまま大きな目を見開いて絶句した。

え?親分そんなおかしなこと言うた?と思っていると、またバッと下を向いて、本当にかすかな…ようやく聞こえるくらい小さな声で……そんな……自分でなんて……と言われて、アントーニョの方が絶句する。

いやいや、この年で自分でしてへんてありえへんやんな?!と思うものの、まるで猥談をされた初心な処女のお嬢さんのような反応に、もしかして?と、恐る恐る聞いてみる。

「…自分でしたことあらへんの?」
と、その言葉に真っ赤な顔でコクンと頷かれて、アントーニョは
「マジか……」
と、額に片手をあてて天井を仰いだ。

「そんじゃあ毎回たまったら下着汚すやんな?」
との言葉に震えながら身を縮ませるアーサーを前に少し考えこむ。

そう言えば…親は仕事で海外と言っていた。
教える相手がいなかったのか…。
いや、普通自分でなんとなくするもんやんな……

そうは思うものの、こうして見るとまだまだ小さくてか細くて自分の周りの男子高校生と同じ生き物には到底思えないこの少年ならまだ自分達のような性欲はないのだろうか…いや、でも精通はしているのだから…などなどクルクル考えが脳裏を回り、結局聞いてみる。

「あのな…やり方…とか知っとるん?やろうと思うた事とかもないん?」
「…やり方は…漠然と?…やったことないけど……」
と疑問形で答えられた瞬間、アントーニョの中におかしな使命感が生まれた。

これは…誰かが教えてやらないとずっとこのままかもしれない…。

「ほな、教えたるわ。これからずっと下着汚すの嫌やろ?」
と言ってブランケットを引っぺがすと、ビクゥッ!とすくみあがられて苦笑する。

「大丈夫。みんなやっとるし、俺かて中学の頃には自分で抜いとったで。怖ない怖ない」
と言いつつ、なるべく普通に下着を脱がせて自分がいつもやっているようにアーサーの手を誘導してやるが、手を自身にふれさせたまま硬直するばかりだ。

…あ~…もうしゃあないな。
と、食事でも手伝うような感覚で、アーサーの手の上から自分の手を添えて動かしてやると、困惑したようにポロポロと涙をこぼし始める。

「大丈夫、大丈夫やで。気持ちええやろ」
と、それでも刺激に反応を示し始めるモノをさらに刺激しながらも、ポンポンと背中をなだめるように叩いてやると、アーサーは急所に拘束されているのと反対側の空いてる手をアントーニョの背に回して、きゅうっと抱きつくような体制で肩口に顔を埋めた。

…んっ…んぅ…と小さく漏らす声。
何故か甘い香りのする細い身体。
なんだか相手が男子高校生という事も忘れてモヤモヤした気持ちになってくる。

おかしい…。
自慰を手伝っているというより、ペッティングでもしている気分だ。

飽くまで困っている子どもを助けてやっているだけのはずなのに…付き合うというのも、そのための演技のはずなのに、可愛い…と思う気持ちがだんだん子ども、被保護者に対するソレだけではなくなってしまっている気がしてくる。

…やぁっ……
と、もう本当に自分と同じ男子高校生か?と思いたくなるような可愛らしい悲鳴をあげてアーサーが吐精した頃には、困った事に自分のソレも反応していて、アントーニョは慌ててアーサーの後始末をしてやって、新しい下着を出してやると、

「これ洗って来たるなっ」
と汚れた下着を持ってバスルームに駆け込んだ。

もちろん…今自分自身が教えてやった事をそのまま自分も致したことは言うまでもない。




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