恋人様は駆け込み寺_2章_5

まあ見つからないだろうと思いつつ、それでも足早に図書室に向かいながら、ギルベルトはアーサーからは聞けなかった答えを聞き出そうとアントーニョに聞いた。

「お前…なんでいきなりアルトと付き合い始めたんだ?」

叩くなら正面から叩き潰す系のアントーニョがよもや嫌がらせとかで付き合うとかはないとは思うものの、唐突過ぎて少し心配だ。

アーサーはお互い生真面目な性格なのもあって気の合う可愛い後輩なのである。
裏はないだろうが軽い気持ちで真面目な後輩にちょっかいは出してほしくない。

それに対してアントーニョはケロっと言った。

「泣き顔がな、可愛かってん。
ちょっと色々あって…ああ、もうハッキリ言うとエンリケの事で困り果ててて泣いとったんをたまたま見てもうてな、子どもみたいにポロポロ泣くんやで、あの子。
もうこれは親分が守ったらなって気になってもうたんや」

嘘は苦手だ。
特にギルベルトは勘が良いので嘘をつけば見破られる。
だから本当の事を言った。
ただ…言わない事実があるだけで嘘ではない。

「泣いとるからキャンディ口に放り込んだったら、そのキャンディみたいに目ぇまん丸くしながらほっぺ膨らませながらコロコロしとんのもめっちゃ可愛えし、こんなこと言える相手おれへんってシャクリあげんの見たら、もう堪らんくなってもうて、付き合って守ったる事にしたんや」

支離滅裂な話だが、まあその光景は想像出来る気がした。

元々可愛いもの、小さいもの、か弱いもの…ようは守ってやりたくなるようなものが、アントーニョは大好きだ。
そして…アーサーは小柄な上、実年齢15歳というのが信じられないくらいの童顔である。

たまたま困って弱っているところをみたら、今までのやりとりによる偏見が吹っ飛んで、そのまるで頼りない子どものような姿に絆されてしまったのだろう。

――ショタペド…
という言葉が喉元まで出かかったが、ギルベルトはかろうじてその言葉を飲み込んだ。

確かにショタペドはやばい。
だがまあきっかけはとにかく、一度懐に入れてしまえば、アントーニョは最後まで面倒をみる情の厚い男ではある。

――あいつよりは…全然マシか…。

アントーニョによく似た面差しの…しかし正反対の性格をした一学年上の男を思い浮かべてギルベルトは小さく息を吐き出した。

エンリケは一般的には優秀との噂で、しかし目下の者…もっと言うなら、その下についていた事がある者は揃って口をつぐむ存在だ。

小学生の頃から積極的に委員会の委員長や部長に立候補し、務めていたが、エンリケが抜けたあと、委員会は混乱を極め、部なら衰退する。

外側からみる分には、しっかりした委員長、部長のあとを、次代がきちんと務められていないのだろうと見られていた。
が、それが仕組まれたものだということを、ギルベルトは身を持って体験している。



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