恋人様は駆け込み寺_2章_4

「はあ??トーニョと付き合い始めたぁ?!」
何故そうなる?何故よりによって?!と、さすがのギルベルトも呆然だ。

自分やフランとは仲が良いと言っても、アントーニョはアーサーとそんな接点はなかった気がする。
いや、むしろ中学の頃は風紀委員だったアーサーに注意されすぎて、仲が悪かった気が?

「いや…まあ色々あって……」
と言いにくそうに口ごもるアーサー。

付き合い始めたきっかけその他はアントーニョが説明を考えてくれる予定なので、考えてない…というのが本当の理由ではあるが、ギルベルトは、アーサーの性格からして馴れ初めを自慢する感じではないので、単にそれを羞恥からくる態度だと捉えた。

とりあえず校庭で二人が揉めてる理由は判明したわけだが…さてどうするか…。

「えっとな、アルト悪い。
俺ちょっとトーニョの様子見て来てえんだけど、フランに渡さねえといけないもんがあってだな、他に見られたくねえから、図書室でフランを待ってて、フランが来たら直接渡してもらえねえか?」
と、カバンの中から本を出してアーサーに渡す。

アーサーの側も自分が原因とわかっているので、それを受け取って了承した。

「んじゃ、たぶんすぐ来ると思うから頼むなっ」
と、アーサーを図書室へ送り届けると、軽く手を上げてギルベルトは教室を出て校庭に急いだ。

そうしておいて、スマホをいじってフランシスに事情を説明して少しでも急いで登校して図書室へ向かうように促すメールを打つ。

アーサーに渡したのはただのレポートの資料だ。
もちろんフランシスに渡す必要などかけらもない。

だがあれは…まずすぎる人物だ。
良くも悪くも腹芸の得意ではないアントーニョが一人で対峙しているのも気になるが、万が一にでもエンリケがアーサーが一人になった教室に来るのも怖い。
なので、とりあえず普通なら先に向かうであろう1年の教室じゃなく、図書室へと避難させた。

出来れば事前準備なしに関わりたくはなかったが、親友と可愛がっている後輩、二人が関わってしまったとなれば、もう仕方ない。
自分はそれを放置して何かあってもそれを潔しと出来る性格ではない。

幸いギルベルトが校庭に戻った時には、まだ二人は校庭にいた。

「自分じゃ話にならんわっ!」
と、ギルベルトが一人で戻ったのを見ると、エンリケが校舎に向かって走り出していく。

「ちょ、待ちぃやっ!」
と、それを慌てて追おうとするアントーニョの腕をギルベルトはつかみ、

「大丈夫、ちゃんと避難させてるから」
と、校舎の方へと歩きながら小声で伝える。

「避難?」
「おう、教室に一人で置いておいて、凸されたらアレだから、今図書室だ」
「さすがギルちゃん、無駄に策士やなぁ~」
と、失礼な事を言う悪友をギルベルトは一応どついておいた。




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