GoWest-APH西遊記-弐の巻_10

一方で部屋に残された3人は、妖怪達に当然ながら用はすんだのだからと村へ戻るように促された。

しかしアーサーからの連絡がくればすぐ踏み込まないとならない事を考えると、ここから動くわけにもいかず、ギルベルトはどう言い訳するか悩むが、アントーニョに迷いはなかった。


「村長、大丈夫なん?」
と、どう考えてもお前、それは村長に対する態度じゃないだろ?というような言葉をかけながら歩み寄ったかと思うと、床にへたり込んだままのフランシスの隣に膝まづくと、他に見えないようにグリリ!とこぶしを思い切りその腰へとねじり込む。

そうしておいて、
「ぐえええぇぇ~~!!!!」
と堪らず悲鳴をあげて床をのたうちまわるフランシスから素知らぬ顔で残された妖怪の中で一番偉そうなあたりに顔を向けると、さも困ったという表情を作って

「すんません。村長さっき転んで腰痛めてもうたみたいで。
今動かすとかなり痛いみたいやしすぐ治ると思うんで、小一時間だけ休ませてもらえませんか?」
と、またちらりとフランシスに視線を向けた。

妖怪達からすれば、これを無事に帰さなければ次回から花嫁を寄越さなくなるかもしれないというのもあり、渋々これを認める。

(おい…無茶すんなよ…)
と、同じくフランシスに歩み寄り、ホッとしながらも小声で囁くギルベルトと、

(ホントだよっ!お兄さんの腰が死んじゃったらどうすんの?!全国のマドモワゼル達が号泣するよ?!)
と、涙目で腰をさするフランシス。

そんな二人に全く悪びれる事なく
(やって、アーティの安全と比べたらフランの腰なんてミジンコほどの価値もないやん?)
と堂々と言ってのけるアントーニョに、
((この三蔵(様)厨が……))
と、二人は揃ってため息をついた。


こうして待つ事ほんの数分。
奥の扉が開いて側近がこちらに戻るのとほぼ同時だった。

「いったぁ~~!!!!」
と、アントーニョが頭を押さえ、そして叫ぶ。
「合図来たでぇ~!!!」

「「待って(たぜっ)ましたっ!!!」」
と、ばっと扮装した服を脱ぎ棄て、それぞれ武器を取る二人。
もちろんアントーニョは頭痛を感じた瞬間に如意棒を振り回している。

あとは村人を村に送り届けるだけと、自分達のエリアに居る事もあってすっかりくつろいでいた妖怪達はパニックだ。

ぶんぶんと如意棒で慌てて武器に伸ばそうとする大勢の妖怪達を叩きのめすのはアントーニョ、援軍が来ないように念のため…と、入口方面のドアを閉めて見張るフランシス。

異変に即反応してドアの向こうへ取って返そうとする側近は、すばやく回り込んだギルベルトが対峙する。

おそらく牛魔王に報告に行こうとしていたのだろうが、さすがに素早く判断し、ギルベルトに向き合う側近。
部屋の中央でアントーニョがなぎ払っている他の妖怪達と違って、こちらはそれなりに知能が高いらしく、攻撃の精度も高い。

室内戦と言う事を意識した短めの双剣を駆使して間合いに入ろうとする相手から、ギルベルトは自身の武器、降妖杖を巧みに使って距離を取る。

多数の妖怪を一手に引き受けながらもアントーニョはその様子に気づいたらしく、ギルベルトが動きやすいように雑魚妖怪どもを引き連れて、やや入口よりに移動した。

さすがに統率の取れた軍隊よりは乱戦の中に身を置いて己が腕を磨いたつわものである。
こんな中でも鈍らないアントーニョの戦闘時の状況把握能力にはギルベルトも素直に感心した。

降妖杖を思い切り振りまわせる場所さえ確保できたなら、伊達に天帝の近衛隊長をやってはいない。
数撃も撃ち合えば、地方妖怪の側近を叩きのめすくらいは朝飯前だ。

ざくりと宝杖の先に着いた半月刃で敵の喉を切り裂けば、悲鳴すらあげることなく側近は絶命する。






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