GoWest-APH西遊記-壱の巻_8

こうしてそのあたりはうま~く誤魔化された形で二人はあとの護衛達の待つ村はずれの木の下を目指した。

道中、悟空はしょっちゅう、『暑ない?』『疲れへん?疲れたらほんま言ってな?』などと三蔵を気遣ってくる。
もちろん三蔵の荷物は悟空が担いでいる前提である。

「ほんま、護衛の方が馬引いてこっちに迎えにくればええのに、気ぃきかんやっちゃな」

「ああ、お前の説得に時間がかかると思ってたから、あとの二人にはギリギリまで旅支度をしてもらってたんだ」

「それにしたって、アーティにこんな道のり歩かせるとか、ありえへんわ。
あとの護衛って、誰なん?もう俺ら二人で天竺目指したってええんちゃう?」


むしろそうしたい、半端な護衛など邪魔なだけだと言ってのける悟空に、三蔵は、こら、と軽くたしなめるようににらむ……が、可愛らしい顔立ちの少年僧が上目づかいで睨んだところで可愛らしいだけで、効果はなさそうだ。

いや、別の意味で効果はあったか。
その視線を少し避けるように視線をそらして口元を片手で塞いでいる悟空の褐色な肌に若干の赤みがさしている。


「ああ、もうそういう可愛らしい顔やめたって。
特に二人きりの時はあかん。あかんよ?」

悟空は天に仕えていたこともあるとはいえ、妖怪である。
仙人達のように霊力もあるが、天界で多くを占める仙人達よりは人間に近い。
いや、力がある分、欲に関しては貪欲なのだ。

ましてや三蔵は若くとも上質の霊力を持つ高僧である。
妖怪達にとっては色々な意味で美味しそうで、それは悟空とて例外ではない。

奪ってしまいたいと、本能が思い、三蔵のためを思えば天竺に行く途中で身を穢して僧としての身分や霊力(ちから)を奪ってしまってはまずい、むしろそういう輩から守らねばという理性がそれを押し込め、二つの強い気持ちが悟空の中でぶつかりあっている。

「ちょっとだけここで待っといて」
葛藤の末、悟空はよいしょっと担いでいた三蔵の荷物を道の端におろすと、そのまま草むらを抜け川の方へと消えていった。

そうして待つこと数十分。
少し疲れた顔で悟空が戻ってくる。

そのやや気怠そうに男臭い色気を放っている様子から、世慣れたものであれば何をしてきたかはわかりそうなものではあるが、生憎、生まれてすぐ釈迦如来に引き取られて、そのままその手元で大事に大事に世間の風にあてないように育てられた三蔵は全く気付かない。

荷物の上にちょこんと腰を下ろしていたのをスクっと立って、

「用事すんだのか?じゃ、行くか。」
と、当たり前に進むあたりで、

(ああ、この子、ほんま俺がカバーしてやらんと危ないなぁ
と、悟空は内心ためいきをついた。





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