GoWest-APH西遊記-壱の巻_2

どこかに実在したかもしれない、しなかったかもしれない、とある国、とある時代の話である。


傲来国の花果山にある霊力の宿った仙石から天地の霊気をまとった石猿が誕生する。
生まれてすぐ自らつけた名をアントーニョと言う。


このアントーニョ、石猿と言っても単なる猿ではない。
霊力を持った猿の妖怪である。
形の良い尻の上から伸びた尾や、やや濃い体毛などは猿のそれだが、そんな猿らしい部分を別にすれば、見た目はさして人間と変ったものでもない。
それどころか、綺麗な形の眉や、その下の生き生きと輝く翡翠のような目、すっと通った鼻梁や、愛想の良い、少し端の上がった口元など、なかなか人好きのする顔立ちで、体格の方もやや細身ではあるが適度に筋肉のついた、なかなかの美丈夫であった。

その外見の精悍さにたがわず、力も度胸もなかなかのもので、生を受けて100年もする頃には花果山の周辺の猿を従えて王となり、その武勇で遠く天界までも名が轟くほどになっていた。

そんな様子であったから、そこまでの力をただ無為に放置しておくことも危険かもしれぬと、天界から仕えるようにと使者を送られること数度。

通常ならばありがたくも伏して従うところであるところだが、この猿、飽くまで自由、飽くまで気ままに独立独歩。
のらりくらりとその誘いを断り続ける。

そうしてかわし続ける事数百年。

何を思ったか何がきっかけか、ある時急に誘いを承知し天界に仕え、ありがたくも天帝から賜った名が【斉天大聖孫悟空(せいてんたいせいそんごくう)】。
以後、皆彼を、悟空と呼ぶようになる。



こうして天界の守り神とでもなって落ち着くかと思われた悟空ではあるが、これが元々続かぬ性格だったのか、何か不満でもあったのか、天に仕えて丁度10年と10日、いきなりすべての任を放棄したばかりでなく、花果山に戻って荒れに荒れた生活を送るようになった。

これにはもちろん天界が眼をつぶるはずもなく、悟空は天界での自身の世話役でもあった釈迦如来によって五行山という山の下敷きにされ、封じられたのである。

こうして花果山に生まれ天界で任を務めるほどの力を持った石猿の物語も終焉を告げ、全ての者の記憶から忘れ去られると思ったが、世の中、色々な事があるものだ。
この石猿、しばしのちに再び物語の舞台へとのぼることになる。



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