家族と伴侶のクリスマス8

「とにかくな、あいつにとっては家族より伴侶の方が大事やねん。
でもってあいつの言う家族っちゅうのは実家のそれやから、その2つが重なる事がないんや。
実家の家族は当たり前に伴侶ちゃうし、伴侶は実家の家族ちゃうって言うことや。
親分が言う家族っちゅうのは、実家もそうやけど、新しく伴侶と一緒になればそれはそれで新しい家族になるっちゅう事やから、自分と伴侶になりたい言う事は、イコール色々を許し合う家族になりたいというのと同意語なわけや。
わかるか?」

「…なるほど……」

手を顎に当ててしばらくスペインの言葉を脳内で反復していたらしい恋人様は、この説明でようやく納得してくれたらしい…と思ったら

「でもな?」
と、小首をかしげられて、スペインは
「まだ何かあるんかいっ」
と、は~っと大きく息を吐き出した。

「お前のはわかった。
世帯としても、結婚したら実家から籍が抜けて、新しい世帯になるもんな。
それも確かに家族だし、それを壊さないように努力は必要だが、長く一緒にいるとだんだん居るのが当たり前になってくるのもわかる。
日本でいうところの鴛鴦の契り(※おしどりの夫婦のように仲睦まじく一生添い遂げる事)を結びたいって事だよな。
それはもっともだと思う。
俺もたぶんポルと同じで家族=実家と捉えていたから、そのあたりに誤解があった」

うんうんと一人納得したように頷くイギリスに、正直鴛鴦の契りというのは何かは分からないがなんとなく正しい気がするのでスペインも頷いておく。

ティーポットとカップをトレイに乗せてリビングへと移動するイギリスのあとに、お茶菓子の皿を手についていくスペイン。

ことりとトレイをテーブルにおき、相変わらず優雅な手つきで注がれる香り高い紅茶。
それを受け取って口をつけると、素晴らしい香りと深い味わいに包み込まれる。


はぁ~…うまぁ……
と、色々暴走した挙句のそれなので、スペインはしみじみとため息をついた。

…が、話はまだまだ続いていたらしい。

「でもな、ポルのはおかしい…というか無理だろ?」
同じく自分のカップに紅茶を注いだイギリスは、スペインの方を向き直って言った。

「おかしい?どこが?」
と、そこで聞き返してはいけなかった。
流すべきだった。
その一言がまたカオス空間を広げる事になるのだから…。

「だってな、あいつが俺の伴侶になるってありえないじゃないか」
と、いきなりかましてくれて、スペインは硬直する。

いや、なりたいと言われても困るわけだが、あの距離の近さでありえないとまで断言してしまうのか?

なんとなく斜め上に話が行きそうな予感もするが好奇心には勝てず、スペインは思わず聞いてしまった。

「なんで?」
「なんでって、当たり前だろ」
「当たり前ってなんで当たり前?」

そこで『お前がいるから♪』なんて可愛い答えは絶対返って来んやろな…と思っていると、本当に返ってこなかった。

「だってあいつにはマカオがいるだろ」

いや…わかってた。わかってたで、親分。
親分がいるからなんて返事が返って来んのはわかってた。


スペインががっくりしてる間にもイギリスの話は続いていく。



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