「ただいま~親分帰ったで~」
と、声をかければ妖精さんがドアを開けてくれたらしい。
す~っと開くドアの横、キラキラした光に
「おおきにっ!あとで一緒にチュロス食べようなぁ~」
と声をかければ、嬉しそうにクルクル回る。
「おかえり。ほら、いくつか出来てるぞ」
と、ナイフを片手に嬉しそうに目鼻をくり抜いたかぼちゃを掲げるイギリス。
いわゆるジャックオランタンというやつだ。
大小のハロウィンかぼちゃに囲まれて子どものように無邪気に笑う可愛い恋人に、アントーニョの表情も自然に緩む。
「お~、ずいぶん作ったやん。
で?寒いところから帰ってきた親分に温かい何かあったりせえへん?」
と、コートを脱いで外を歩いて冷たくなった唇をイギリスの柔らかい頬に押し付けると、
「ああ、もうお湯わいたかな。ちょっと待ってろ」
と、ナイフを置いて立ち上がりパタパタとスリッパの音を響かせてキッチンへ向かうイギリスの姿がドアの向こうに消えたその時だった。
ごぉぉぉ~~~!!!と言うものすごい音と共に、木々が倒れる音。
「な、なんなんっ?!!」
と、慌てて外へ出てみれば、なんと小型機が家の前の広い道路に止まっている。
え?ええ???
呆然と立ちすくむスペインの前でドアが開いて降り立つ男。
どこかでみたことのある…いや、みたことなければ良かったのに…と思う茶色のジャケット。
「Hi!スペイン。イギリスがお邪魔してるよね?君は知らないかもしれないけど、彼は毎年ハローウィンは俺と勝負することになってるんだ。
勝ち逃げなんて卑怯な真似、ヒーローは許さないんだぞ☆
ということで、彼の事は俺が引き取るからっ」
当たり前にそう言い切って、大股でスペインの家に入って行くアメリカ。
せっかくイギリスが一緒に過ごしてくれるって言うたのに……
親分めっちゃ頑張ってお菓子いっぱい作ったったのに……
二人(+妖精さん)で楽しいハローウィン過ごそうと思うて休み取るために仕事かてめっちゃ頑張ったんやでっ。
でもイギリスは行ってしまうかもしれへん。
可愛い元弟が大西洋超えて迎えになんて来たら行ってしまうかもしれへん。
「…嫌や……」
ジワリと目に涙が浮かんだ。
情けないと思うが、ずっと一人ぼっちだった生活でようやく一緒に過ごす恋人ができたのだ。
楽しみにしてた…すごく楽しみにしてたのに……
「行かせんといて。妖精さん、お願いやっ」
半泣きのスペインの言葉を聞いて、光がキラキラと舞った。
その光はまるでその願いを了承するようにスペインの周りで明滅し、グイッとスペインを家の方へとひっぱっている。
その強いちからに引きずられるようにスペインは自宅へと戻った。
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