不思議の国の金色子猫17

「待たせて堪忍な~。親分戻ったでっ!」

スペインが戻った時には、アーサーは好奇心が抑えきれなかったのか、ワイングラスに近づいて下から液体をのぞき込んでいるところだった。

そこにスペインが声をかけたのでふさふさのしっぽをピンと立てて機嫌よく、

――まぁお♪
と、鳴いてふりむいて……次の瞬間

――ふぎゃぁああ~~!!
と、慌てたように後ずさったところをワイングラスにぶつかってグラスを倒した。

こぼれるワイン。

幸いグラスは割れなかったが、パニックになったアーサーが毛をワインで真っ赤に染めながらその場でツルツル滑っている。


「ちょ、落ち着きぃって!どないしたんっ!!」
と、抱き上げても、フ~っ!と威嚇するばかりで、全く落ち着く気配がない。

一体どうしたというのだ…と、頭を掻いて、耳元に当たった手できづく。

「あ~、これか。堪忍」

そこでスペインは慌ててPC眼鏡をかけたまま来たのに気づいて眼鏡を外してテーブルに置くと、そこでアーサーもハッとしたらしい。


――ま、まぉ~
と、途端に暴れるのをやめ、ごまかすように毛づくろいをするがごとく前足を舐め……どうやら酔っぱらったらしい。

とにかく拭いてやろうとタオルの上に下ろすとぐるぐるとそのタオルに寝転んで転がりまくり、頭をぐりぐり擦り付ける。

あかん…大丈夫か…?

本人(本猫)はいたって機嫌がよさそうなので、とりあえず濡れたタオルで丁寧に毛についたワインを拭きとってやって、あとはマオマオご機嫌で転がりまくっているのに任せて、テーブルの上を片付け、自分もちゃっちゃと食事を摂る。

こうしてスペインが食事を終えて食器を洗ってリビングに戻ると、アーサーはどでんと腹を見せてすぴすぴ寝ていた。

これではまるでパブった某国紳士のようだ…と、スペインは吹き出す。
某紳士もこれくらいちっちゃければパフっても可愛いものなのかもしれないが……。

アーサーも明朝、ベッドの中で死にたい、死にたい、と、呻くのだろうか?


そんなことを思いながら、スペインはもう一度濡れタオルでアーサーの毛にかすかに残るアルコールの匂いを拭き去ると、ちいちゃな身体を抱き上げて寝室へと向かった。

そして翌朝、スペインはまさにその図を目にすることになるのである。




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