こうして子猫のぬくもりを感じながらも、さぼりがちだった仕事に勤しんでいるうちにすっかり夜は更け、一日の最後の食事、夜食のセナの時間になる。
この一日最後の食事だけはスペインの手で食べさせる離乳食ではないため、アーサーもスペインの食事の準備が整うのを待ち、一緒に摂ることになっている。
――まぁおぉ
とぷとぷとワイングラスに注がれる赤い液体に、アーサーは興味を惹かれたようだ。
それはスペインの食事とわかっているため手は出さないが、揺れる赤いワインにうっとりとした目を向けていた。
「じゃ、食おうか~。いただきま~…」
――ヴィ~ヴィ~…
手を合わせて言いかけたスペインの言葉を遮ったのは携帯の電子音だ。
「なんなん、こんな時間にっ!え?マジかっ?!」
不機嫌に携帯のメールをチェックしたスペインは、舌打ちをした。
「なんや上司が書類一枚送り忘れとったらしいねん。
それメールで送ってくるさかい確認してOK出しといたらな、明日、配属1年目のピッカピカの新人部下がめっちゃ困るらしいから、確認して送り返してくるわ。
すぐ終わるさかい、ちょっとだけ待っといてな」
と、どこまで子猫にわかるかはわからないが説明するだけして、スペインは慌てて書斎へ戻って行った。
――ほんま、一日5回の食事ん中で唯一アーサーと一緒に食べられる食事のセナやのに、あのアホ上司が~~!!!
スペインは眼鏡をかけてPCを立ち上げ、自分は机の前に立ったまま急いで書類に目を通す。
そして1点、2点、注意事項を添えると、書類を送り返してPCの電源をオフ。
「終わった~っ!!アーサー、待っといてなっ!!」
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