スペインが自室で仕事をしている時は――仕事は出来るだけ自宅でできるようにしてもらった――アーサーは広いトマト畑に飛び出して遊んできて、お腹がすくと帰ってくるのが、このところの日常だったが、先日の会議後から今日で3日、毎日スペインにくっつきたがるので、書斎の足元にリビングのソファに置いてあるクッションを持ってきてやれば、そこでスペインの踝あたりに頭を擦り付けながら大人しく寝ている。
「…?どないしたん?ほら、キッチン行こか」
と、しゃがんで手を伸ばすが、何故か唸って後ずさる。
え?
そこまで警戒されたのは初めてで、地味にショックだったが、その視線が自分の顔にじ~っと注がれているのを見ると、ああ、と思い当って、スペインは
「もしかして、これが嫌やったん?」
と、PCを使っている時だけかけているPC用眼鏡を外すと机に置いた。
するとアーサーはおそるおそる近づいてきて、差し出された手の指先にピンクの鼻を押し付けてフンフンと匂いを嗅いで、前足でパフパフと叩いてみて、ようやくスペインだと納得してくれたようで、まぉ~と、すりすりと頭をスペインの手に擦り付けて手の上にのぼってきた。
「ほな、行こうか~」
と、そのまま抱き上げた手を胸元に持ってきて立ち上がる途中、ちょうどアーサーの頭が机の高さになった時、机の上の眼鏡を見てアーサーがビクンと身を固くする。
眼鏡がそんなに怖いのだろうか…と、スペインは首を傾げながらも、食事を作るためにキッチンへと向かった。
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