不思議の国の金色子猫7

「イ、 イギリス、何してるんだい?」

ドアを開けてイギリスの方に進みかけた足は、スペインの姿を認めてぴたりと止まる。
その瞳はそれとわかるくらい泳いでいた。

一見マイペースで強引に見えるアメリカは、実は可愛がられて育ったのもあって、戦う相手として存在する者以外からの悪意を向けられ慣れてない。

自身が白黒はっきりする性格で敵味方をはっきり分けるため、“自分に敵意を向けてくる”敵でない相手はそうとうに苦手だった。

そういう意味では今の状態のスペインなどその最たるものだ。

昨日はほとんどイギリスと口をきく事さえできずに終わって、おそらく今日も悪友達がいればそんな感じに近づこうとしても阻止されるのが目に見えているので、わざわざ主催国として早く来ているであろうイギリスの時間に合わせて早く来たのに、よりによって3人の中で一番会いたくないスペインと一緒にいる。

最近携帯や個人の家の電話に電話をしても通じない。

仕事用の番号にかけても休暇中だとけんもほろろで、まるで避けられてでもいるように話すことができない。

だから世界会議が唯一確実な機会なのだ、そう思って

「ちょっと二人で話したいんだけど、良いかい?」
と、廊下へとうながすが、なんと自分にはなんのかんの言って甘いはずのイギリスが

「悪いな、今はダメだ」
と、首を横に振ったのだ。


アメリカとはいつでも話が出来るが、スペインとこんな距離で話せるのは今日が最後かもしれない……そんな思いでした選択なのだが、アメリカは当然そんなことを知る由もなく、ただただ呆然とする。


その驚きが少し収まると、久々に聞いた自分に対するイギリスの言葉にだいぶいつもの調子を取り戻して、

「だってスペインとは近いしいつでも話せるだろっ。反対意見は認めないんだぞっ」
と、これもいつもの口癖を乗せて粘ってみるが、そこで答えてきたのはイギリスではなかった。

「大人やって言うなら、アポ取りや?坊」
と、言葉は柔らかいものの、アメリカが未だ見たことのない、現役時代の空気をまとった声でスペインが好意とは程遠い笑みを浮かべて言う。

殺気…と言ってもいいだろう。
黒いオーラを背負った元覇権国家の威圧感に、大切に育てられた大きな子どもは固まった。

そこで助け舟を出すように、イギリスが
「アメリカ、話は今度な」
と柔らかい声で言えば、素直にうなづいて去っていく。

こうしてやがて悪友二人と他の国々も来て、今日も速やかな世界会議が行われた。




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