親分と魔法の子猫10

その後、何故かプロイセンまで菓子を持参していたので、目の前に3人からの菓子を積み上げ、何が何だかわからないままなし崩し的に食べている間に他の国々がぞろぞろと集まり始める。

そして…動揺する。

不仲なはずのスペインが笑顔でイギリスを構い倒しているだけで異常だが、それを牽制する悪友二人……イギリスの前に山と積まれた菓子は、どう見ても3人がそれぞれ持参したものとしか思えない。


――悪友とまゆげキタ――(゚∀゚)――!!

と、一部目を輝かせて音速でシャッターを押しながら何やら書き殴っているあたりもいるが、たいていの国々はその異様な光景に怯え、遠巻きにしている。


その周囲の反応で、緊張が一周してわけがわからなくなっていたイギリスも、ようやく今の状況の異常さに気づいて、

「お前ら…もしかして何か企んでんのかよ?!」
と、両隣に交互に視線を向けるが、スペインは楽しげに

「なあんも企んでなんかおらへんよ~。親分、イギリスと仲良ぅしたいだけやねん」
と、イギリスの頬にキスをおとし、プロイセンは

「他の二人はとにかくとして、俺様は別に仲悪いわけじゃねえだろ?普通だろ?」
と、兄貴スマイルでイギリスの頭を撫でる。

そして…ばちっと飛ぶ火花。
本気でわけがわからない。
さらにわけがわからない事には、何故か会議が始まっても内職をしないスペイン。
プロイセンはドイツの代理としてそのまま出席。

そして…普段ならアメリカの荒唐無稽な案にイギリスが反対すると、「お兄さん、イギリスに反対~」と、ちゃかすフランスが、イギリスが口を出すまでもなく、真っ先にアメリカの案に意見をしている。
もちろんその時だけは悪友二人もこぞって一緒にダメ出しをする。

いつもの様式美的なものが根底から覆され、どの国も…もちろんイギリスを含めてみんな、何事が起きているのかと言葉少なになるが、実は元覇権国家、常に大国の地位を築いてきた国、一度はヨーロッパを手中にしかけた軍事国家と、最近は馬鹿ばかりやっているので皆すっかり忘れているが、悪友3人はいずれも歴戦の猛者なのである。
その気になれば優秀なのだ。

会議は嘘のように速やかに進んでいった。
本当に初めてくらい踊らない会議に、もしドイツが出席していたらさぞや感動した事だろう。

今回はアメリカの意見を諌めて矢面に立つこともなく、あまりにも平和的に会議一日目を終えて脱力しているイギリスの手を、ぽんぽんと軽くたたいて

「お疲れさん」
とプロイセンが笑う。

反対側では
「明日も親分らがちゃあんと言う事言うて自分に酷い事言わせたりせえへんから、大丈夫やで。守ったるから安心し」
と、今度は頭を引き寄せて額にキスを落とすスペイン。

何故?いったい本当に何が起こっているんだ?
とわけがわからなさすぎて固まるイギリスを見て、荷物をまとめ終わったフランスが寄って来て言う。

「まあ護衛進行役は三銃士におまかせあれってとこだね。
ついでに美味しいご飯も…かな?」

「せやな。今日のところは自分らも一緒でもええわ。
お姫さんもなんや落ち着かんみたいやしな」

「じゃ、行くか」

三人がそれぞれそういうと、まだ呆然としているイギリスの荷物をフランスが片付け、それをプロイセンが当たり前に自分の荷物と一緒に持ち、スペインがイギリスを立たせてエスコートする先のドアを、フランスが開く。



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