同居相手は金色子猫8

こうしてやがて酒やら缶詰やらを取ってきたプロイセンも加わって3人で手早く食事やつまみを作っていく。

人間の時ならつまみ食いをしているところだが、子猫の姿でいると、理性では美味しそうな食事と思うのだが、それほど食べたいとも思えない。
でも視覚的に作りながら楽しげにつまんでいる3人を見ていると、自分もおなかはすいてくる。

ミルクが欲しい。

ま~お、ま~おと、そこでスペインを呼ぶと、ちょうどスペインは手が離せないところで、しかし言いたいことは気づいたらしく、

「フラン、ちょおアーサーにミルクやったって」
と、フライパンを揺らしながら言った。

「はいはい。姫ちゃんにミルクね」
と、いちいち気に障る事を言いながらもフランスは包丁を置いて手を洗い、

「で?皿は?」
と聞く。

「あ~、その食器棚の一番下の白い皿、それがミルク皿や」
スペインの言葉に食器棚に目を向けて、フランスは目を見開いた。

「ねえ、このふちに模様のある白いやつ?」
「そや、それや。」
「おまえさあ……これはないよ」
スペインの返事にフランスは頭を軽く横に振る。

「なんでやねん。それベルからのプレゼントのちゃんとしたやつやで?」

と、その言い方にスペインが若干ムッとして返せば、『そう意味じゃなくてぇ~』と、フランスはそれでも食器棚から皿を出して、流しに立つスペインの前にちらつかせた。

「こんなの猫のミルク皿にしてたら、ベルギー怒るよ?
お前わかってる?これベルギー王室ご用達の高級食器なんだけど?」
と、丁寧な手つきでそれを洗いながら言うフランスに、スペインがあっさり

「それな、アーサーのミルク皿にしたってって言うてベルギーがもってきたんやで」
と言うと、フランスはその場にがっくりとしゃがみこんだ。

「スペイン…お前自分では安い食器つかってるくせに。お前らお猫様甘やかしすぎ」

「まあ、他人様の家の躾には口ださねえこった」
と、そこでケセセっと笑いながら、プロイセンがフランスの手から皿を取った。

いつまでもミルクの用意が進まないので、用意をしてくれたらしい。
お腹がぺこぺこのアーサーにとってはありがたい気遣いだ。

プロイセンはそこに猫用ミルクを入れると、『床におろしていいんだよな?』と確認を取ったうえで、ミルク皿とアーサーを床におろした。


そう、『他人の家の事に口を出すな、そんなことをグチグチ言っててミルクの準備も速やかにできないくせに。だからお前はヒゲなんだっ!』と、アーサーはフランスに向かってフ~ッと威嚇したうえで、ミルクを用意してくれたプロイセンには紳士らしく『マ~オ』と礼を言って、その手をペロリと舐める。


それを見たプロイセンは
「お~、ちゃんと礼言うのか、賢いなぁ、お前」
と感嘆の声をあげてアーサーの頭を撫で、それに応えてスペインは

「そうやろっ?うちの子可愛えだけやなくて、めっちゃ賢いんやっ」
と胸を張って、『親ばか…』と、ぼそりとつぶやいたフランスを軽く蹴り飛ばした。

そう、自分をそんじょそこらの猫と一緒にしてもらっては困る。
なにせ【グレートブリテン及び北アイルランド連合王国】様なのだ。
食事だって、もちろん贅沢は言わないが、良い食器で食べた方が楽しいに決まっている。


食事が終わると少し暇になり、これも猫の本能なのか爪をとぎたくなってきた。
そこで床にいるのを良い事に、そのままリビングへ移動する。
そこにはハンガリーにもらった爪とぎがあるのだ。

50㎝ほどの板にひっかかりの良い絨毯の生地がはってあり、何故か真ん中にはプロイセンらしき絵が描いてある。

模様があったほうが楽しいと思ったのだろうが、一応爪をとぐわけだし、これには少し困ってしまって、結局プロイセンの絵の左右、何も描いてない場所で爪をとぐことにしている。


「…これ…贈ったのハンガリーあたりか?」
と、そこに料理の皿を運んできたプロイセンが来てアーサーが爪を研いでいる板を見て、がっくりと肩を落とすのを見て、アーサーも気の毒になって、『マォマ~オ』と、ぽんぽんと前足でプロイセンの足をぽんぽんと慰めるように叩いた。

「お前…優しいなぁ。そういえばちゃんと絵を避けて爪研いでくれてんのな」
と、プロイセンはアーサーを抱き上げて頬ずりをする。

すると…何故わかったのかはわからない。
キッチンから怒涛の足音が聞こえてきて、パッコ~ン!!とプロイセンの顔目がけて雑巾が飛んできた。

「うぉ!」
べチャリと顔にかかった雑巾で体制を崩しかけるプロイセンの手からスペインはすばやくアーサーを取り上げる。

「やめたってっ!うちの子やからなっ!
プーちゃん可愛がりたいんやったら、自分ちの犬にでもしたりっ!!」
ぷくりと膨れるスペイン。

しかし、(…か、可愛いなんて思ってねえからなっ!)と、その膨らんだ頬を見ながら手の中の子猫が内心悶えてるなどとは、さすがのスペインも気づいていない。


「お前ねぇ…子猫にそこまで独占欲発揮してどうすんのよ」
と、呆れた声で言いつつ、リビングのテーブルに料理の皿を置いたフランスには、容赦なく顔に肘鉄。

「ちょ、お兄さんそこまでの事したっ?!
なんでプーちゃんより酷い仕打ちかな?愛が足りないよっ!」
と、鼻を押さえるフランスに、

「うっさいわっ!お前のアーサー見る目がいやらしかってん!」
と、スペインはささっと子猫をエプロンのポケットにしまい込んだ。


「ちょ…お兄さん確かに人間なら老若男女OKだけど、さすがに動物には手をだしませんっ!」
と訴えるフランスに、何故か疑惑の目を向ける悪友二人。


「自分…なんでも手ぇ出しそうやん?」
「いつも猫耳つけてはぁはぁしてっしな…」
と、言われてハンカチを噛みしめた。


しかし少しの間のあと、続く言葉…

「まあ…裏地球みたいに猫人間くらいだったら守備範囲だけど…」
で、スペインと…何故かプロイセンからも、アーサーへ近づく事を禁止される。

「だ~か~ら~、完全な猫ちゃんは、さすがのお兄さんもないってっ!!」

と言っても後の祭り、その後はアーサーを抱えているスペインとはローテーブルを挟んで反対側の席が定位置になった。



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