同居相手は金色子猫3

「はいはい、ちょっと待ってな~」
と、エプロンで手を拭き拭き、スペインはぱたぱたと玄関に走っていく。

そしてドアを開けると、そこには可愛い妹分が眼を輝かせていた。

――随分早かったやん。

と言おうと口を開いたスペインに全く視線を向けず、ベルギーはまっすぐスペインの腹のあたり、ポケットを凝視している。


「うっわぁ~可愛えっ!めっちゃ可愛え子ぉやねぇ!」

と家主をガン無視のベルギーにすごい勢いで手を伸ばされ、アーサーはびくぅっと身をすくめてスペインのエプロンに爪をたててしがみついた。
身体が硬直して毛が逆立っている。

どうやら突発事項に弱いらしいと、子猫の新しい一面を発見してスペインは小さく笑うと、安心させるようにポケットの中のアーサーの背をソッと何度も撫でてやって子猫の身体から力が抜けたタイミングで抱き上げた。

「びっくりしてしもうたみたいやな~。
アーサー、大丈夫やで。この子ベルギーは親分の家族やからな~」

ちゅっちゅっと鼻先にキスをして、眉間を撫でてやると、子猫はゴロゴロ喉を鳴らす。

そしてだいぶ落ち着いた頃合いを見計らってベルギーに目くばせをすると、ベルギーは今度はソッと子猫に白い手を伸ばした。

「人見知りさんなんやね。びっくりさせて堪忍な~」
と言いつつ撫でてやれば、子猫は一瞬ビクっとするものの、やがて力をぬいてマ~オと返事をして、大人しく撫でられる。

こうして最初の挨拶が済んだところで、

「ほな、こんなとこで立ち話もなんやし、家入り」
と、スペインはアーサーをポケットに戻して、ベルギーを中にうながした。


「今な、昼の下ごしらえしとったんや。ちょっと座って待っといてな~」
と、ぱたぱたとまたキッチンへ戻るスペインだが、ベルギーは
「ええよ~。うちもなんか手伝うわ。エプロン貸したって」
と、かつて知ったる親分の家とばかりにブラウスの袖をまくる。

「ついたばかりでちょっと休んだったらええのに」
と、それにスペインは苦笑しながらも、
「ここ来てお客様すんの、落ち着かへんわ」
と笑うベルギーに、彼女専用のエプロンを投げてよこした。


こうして当たり前に二人で立つキッチン。

それをスペインのポケットから物珍しげに眺めているアーサーに気づくと、ベルギーは肩で切りそろえた髪をふわりと揺らしてポケットをのぞき込む。

「この子、危なないの?火とかついたら大変やで?」
な~、とアーサーの頭を撫でながら微笑みかけるベルギーに、スペインは、

「ああ、そうやね。そろそろ火ぃ使うから避難しとこか~」
と、アーサを抱き上げるとテーブルに置いてやり、食器棚からマグを出して隣に置いた。

するとアーサーも心得たもので、それ用にテーブルに置いてある缶詰に飛び乗って、しゅるりとマグの中に飛び込んで収まる。

「うあああ~~自分で入るんやねっ!かっわ可愛ええぇぇぇ~~~!!!!」
と、その様子を目を丸くして見ていたベルギーがはしゃいで叫んだ。


そこからはもう料理に向ける気もそぞろで、マグの縁にコテンと小さな頭を預けてじ~っと大きな丸い目で料理をするスペインを眺めている子猫に見とれている。

そしてとうとう料理の手を止めて

「なあなあ親分っ、この子と写真撮ったってっ!」
と、リビングに置いた鞄から自分の携帯を持ってきてスペインにねだった。



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