同居相手は金色子猫2

「うっわぁ~可愛えっ!めっちゃ可愛え子ぉやねぇ!」

5日後…スペインの自宅に来訪者が訪れていた。
ロマーノのメールを見て即スケジュールを調整して駆けつけた、元スペインの妹分、ベルギーである。

まずロマーノからメールをもらった日に、スペインに電話。

「うちにかて猫ちゃんメール送ってくれてもええんやない?ロマだけずるいわ~」

と、可愛いすねた口調で言われれば、一応同性のロマーノよりは若干は遠慮する間柄ではあるベルギーには控えていただけで、本当は自分の子猫の愛らしさを世界の中心で叫びたいスペインは喜んでそれを承諾する。

もちろん
「ロマには先にメール送って猫ちゃんの待機場所とか用意させたんやったら、実際に会うのはうちが最初やでっ!」
と言う申し出を断る理由もない。

こうして双方の都合を合わせて、今日訪ねてきたというわけである。


その日の朝はスペインにしては珍しく子猫に起こされる前に目を覚ました。

頬のあたりにはふわふわとした毛の感触。
視線だけ少し動かすと、金色の塊が見える。

スペインは子猫が戻って以来、離れている間にいなくなられることが怖くて、寝る時に子猫を自分のベッドに一緒にあげるようにした。

すると、子猫自身もすっかり甘えたになっていたのもあって、それを嫌がる事もなくスペインの肩口に丸くなって眠ってくれるようになった。
その小さなぬくもりは日々スペインを極上の眠りにいざなってくれる。

至近距離ですやすや眠る子猫の可愛らしい事。

思わず指先で眉間のあたりをソッとなでると、起こしてしまったらしい。
くぁぁ~と大きく欠伸をして、子猫はそろそろと瞼を開いた。

そしてスクっと立つと伸びを一つ。
そのあとにいつもの習慣で起こそうとしたのだろうか、スペインの頬に向かって前足をのばしかけて、どうやらスペインがすでに起きていて目が開いている事に驚いたらしい。

びくぅっ!と身をすくめて、後ずさろうとしたらシーツに足を取られたのか、ぽてんと尻もちをつく。

その様子があまりに可愛らしくてスペインが思わず笑うと、利口なアーサーは馬鹿にされたと思ったのか、まおっ!と鳴くと、後ろを向いてしっぽでぺしんとスペインの頬をはたいた。

「あーさー」
――………
「アーサーさん、こっち向いてや~」
――………

「アーティ、親分が悪かったわ。
別に馬鹿にしたわけやないで。
アーサーが可愛えなぁ思ったら、つい笑ってもうたんや。
でも気に障ったやったんなら、堪忍なぁ~」

と、スペインが姿勢を低くして子猫の前に回り込み、そのおおきなまんまるな目をじ~っとのぞき込むと、子猫もじ~っとスペインの深い緑の目をのぞき込んでくる。

しばらくそのまま見つめ合ったあと、

「な、堪忍な?」
と、スペインがへにゃりと微笑むと、お許しいただけたらしい。

子猫はぽてぽてと少しスペインの方に寄って来て、ぺろりとその鼻を舐めたあと、ま~お~と、いつものようにミルクをねだった。


「おおきに。じゃ、ご飯にしよか~」
スペインはその様子にホッとして子猫を抱き上げるとキッチンへ向かう。

そしてアーサーがミルクを飲んでいる間に急いでシャワーを浴びて身支度をすませると、さっと朝食を済ませて、今日訪ねてくる妹分のために、昼食の下準備をしようとエプロンをつけた。


…マオ~

スペインがエプロンをつけた時点で、アーサーは準備万端、ポケットに入る気満々である。

「ほいほい、おいで。」
と、スペインがしゃがんで手を伸ばしてやると、飛び込んできた。

「まだ下ごしらえやから、ここやな~」
と、スペインはその小さな体を抱き上げると、アーサー用に作った深めのポケットに入れてやる。

まおっ。

ポケットのふちに小さなふわふわの前足をひっかけて、頭だけだしたアーサーは、こうしてスペインが料理をするのを丸い目をさらにまんまるくして、じ~っと興味深げにながめるのが日課になっていた。

「今日はな~、昔うちにおった女の子が来るんやで~。
せやからご馳走作ったらな」

楽しげに言いながら野菜を切ったりエビの皮をむいたり、忙しく動くスペインの手を子猫はじ~っと眺めている。

アーサーはスペインが料理をするのを見るのがとても好きなようだ。

たまに自分の近くに食材が来ると興味深げに手を伸ばしかけるが、あかんよ~とスペインに見つけられて注意されると、ぴょっと手をひっこめて誤魔化すように顔を撫でたりと、そんなやりとりも、もうすっかり日常になりつつある。
いたずらっ子の相手をしながら料理をするのは存外に楽しい。

そんな風にアーサーと戯れながら普段使わない食器を出して洗ったり、昼食の下ごしらえに勤しんでいると、ふいに玄関のチャイムが鳴った。




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