親分と子猫6

今回の会議は2日間。
今日で終わりだ。

早く家に帰りたいが、きちんと出なければアーサーが戻ってきてくれない気がして、スペインは珍しく内職もせず、真面目に会議に出席していた。

しかしながら、スペイン一人真面目にしてようと不真面目にしてようと、会議はやっぱり踊るのである。
主に……自称ヒーローのせいで……。

午前中は各国の細々とした地域の問題について話し合い、午後はずっと大気汚染について各国が意見を出し合っていた。

そして一通りの国が意見を出し終わったあと、最後はアメリカの番だった。


「大気汚染なんて巨大なヒーローにデカい掃除機で汚い空気を吸い込んでもらえば一発で解決なんだぞ☆」
と、熱弁をふるう超大国。

「馬鹿かっ!そんな非現実的な戯言で時間をつぶすな。却下だ!」

と、そこでその元育ての親様から当たり前の突込みが入るが、超大国は引く様子もなく、唇を尖らせる。

「君はホントにチャレンジ精神てものに欠けてるよねっ。
そんなんだから覇権から転がり落ちて、俺に抜かされるんだぞ」

と言う超大国の言葉に、さすがのスペインもアホかっ…と思う。

チャレンジ精神があれば覇権を維持できたというなら、自分だって覇権から転がり落ちる事などなかったはずだ。
あの時代…真っ先に新しい大陸に足を延ばしたのは自分の国だったのだから…。

…まあ、しいて言うんやったら、あのまゆげがチャレンジすべきやったのは、常識を持った大人に育てられるような子育てやったんちゃう?…と、見事な子育て失敗例にため息をつく。

スペイン以外もおそらくそんな感じの事を思っているのだろう。
生温かい視線をまるで子どもの漫画のような事を言い出す超大国へと向けるが、本人はそんな周りの様子も気にすることはない。

「ああ、もう、わかったよっ。
イギリス、君の顔をたてて、掃除機は君のとこの会社…なんていったっけ…D…ダイ……?」
「ダイ○ン…ですか?」
と、そこで隣に座る日本が小声で補足するのに、それだっ!とピシっと指をたてる。

「そうっ!そのダイ○ンだよっ!それを使うってことでいいだろう?!」

「そういう問題じゃねえっ!!」
イギリスはぴきぴきとこめかみに青筋をうかべながら言うが、超大国は聞いてない。

「そうだな、そのD…ダ…」
「ダイ○ン、ですよ。アメリカさん」

「そう、そのダイ○ンだっ!ダイ○ンの掃除機を日本が大型化して、ガン○ムを操って汚れた空気を吸い込むんだっ」
と、そこでいきなり、ね、名案だよねっ☆と、振り返られて、日本は顔に張り付けた笑顔を引きつらせた。

「え、いえ、あの…アメリカさん。
我が国は小型化は非常に得意分野ではあるのですが、大型化は残念ながら……」
としどろもどろ伝える日本に

「君までそんなこと言ってるのかい?得意じゃないからってやらないでいたら、いつまでたっても進歩しないじゃないかっ。これだから年寄りは……」
と、アメリカは不満げに言い寄る。

ああ…突っ込みたい…。なんで誰も突っ込まんねんっ!!
親分、こんなくだらん話聞くためにここにおらなあかんの?
いくら可愛えアーサーのミルク代稼ぐためとは言っても、いい加減あほらしすぎて腹たってくるわ。

「空気綺麗にしたいんやったら、まず掃除機やなくて空気清浄機やで?
常識学びや、超大国」

スペインが我慢できずに突込みをいれると、思わぬところからの突込みに、ぽか~んとするアメリカ。

次にカ~ッと赤くなって
「そんなの知ってるけどっ…!」
と、ガタン!と乗り出したところで、おそらくこれ以上場が無駄に荒れる事を嫌ったのだろう。

「今日はこれ以上進みそうもないな。
この問題は各国来月までにまとめてまた話し合うということで、今日は終わろう」
と、ドイツが会議の終了を宣言する。

そこでイギリスのみならず、スペインまでと、元覇権国家2国が参戦してきたことに若干緊張の色を見せていた国々がホ~っと安堵の息を吐きだした。




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