恋人様は駆け込み寺_番外編【その男普憫につき】2

こうしてとりあえずアントーニョと合流して、双子と途中で分かれて二人でマンションへ戻る。
エレベータに乗り、6Fを押して閉のボタンを押してドアが閉まって密閉空間になると、途端に重ねられる唇…。

大人と比べるとまだまだ小柄なアーサーは電車などであまりに大人の男性に密着されると妙に圧迫感のようなものがあったのだが、アントーニョにならこうして覆いかぶさるようにして口付けられても、ただ充足感と安心感しか感じない。

途中で止まってドアが開いたら…などと普通感じるようなそんな不安も、温かい腕に包まれているとどうでも良くなってしまう。

チン!と音がすると離れていく体温を寂しく感じながらも、

「ほな、家帰ってからな~」
と差し出される手にまた幸せを感じる。

クリスマスの夜…。
オーナー特権で他は登れないマンションの屋上にいっぱいの電飾をつけて、綺麗なイルミネーションに囲まれて初めて口づけを交わして以来、何度こうして唇を重ねたかわかりはしないが、その都度多幸感で目眩がするくらいだ。

自宅に戻ってドアに鍵をかけると、アントーニョにひょいっと抱き上げられてそのままリビングへ。

ソファに降ろされてそのまま思う存分お互いキスを交わして、息が上がってきた頃、ぐったりしたアーサーの頬を優しく撫でて、アントーニョは最後に鼻先にキスを落とし、

「すぐ飯にするから、食べ終わったら一緒に風呂入れてはいろうか~」
と、制服のブレザーだけ脱いでハンガーにかけると、そのままエプロンを付けてキッチンへと消えていく。

アーサーもシワにならないうちにブレザーだけでも脱いで、風呂から上がった時用に着替えを出そうかと立ち上がりかけると、ポケットの携帯が振動した。

発信人は…エンリケ。

まあ、ちょっと前ならば慌ててアントーニョを呼びに行っていただろう。
しかし最近アントーニョにアントーニョの祖父からエンリケの近況を告げるメールが届いたのを見せてもらったのだが、海外でどうやら心許せる相手をみつけたらしく、ようやく本当の意味で安心したところだったので、アーサーも特に考えることもなく

「ハロー、携帯は変えてなかったんだな」
と、電話に出た。






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