恋人様は駆け込み寺_番外編【白雪姫の継母の話】7

いつもの電車。
アーサーが自分がいようといまいと自宅を出る時間の5分前にアーサーの自宅マンションのエントランス前で待ち合わせだ。

本当は部屋まで迎えに行ってやりたいのだが、中に入るにはボタン認証のドアがあり、その番号はセキュリティ上教えられないと断られた。

まあ、真面目なアーサーの事だ。
住人以外に教えてはいけないというマンションの規則を遵守したいのだろう。
別に自分くらい良いと思うのだが、そういう生真面目なところも可愛い。

アーサーの部屋、305号室のチャイムを鳴らして待つ事数分。

全く反応がない。
おかしい…。
この時間なら家にいるはずだ…。

不審に思って電話をかけてみたら、後ろから駅のアナウンスのようなものが聞こえる。

「アーサー、今どこなん?」
と、予測は着く気はするが聞いてみると、やはり

『あ~、もう駅。今日は早く出たから』
と言う答えが返ってくる。

何故?どうして?

今日は何か早く出なければいけない日だったか?
いや、そんなはずはない。
アーサーの予定は全部把握している。

おかしい…おかしい…おかしい……何かがおかしい!

「なんで今日に限って?ちょお待っとって」
結局わけがわからずそう言うと、アーサーもなんとなく焦ったような声で
『無理。もう電車来たし人と一緒だから。じゃ、切るな』
と言って通話を切ってしまった。
それからは再度電話してもつながらないので、おそらく電源を切ってしまったのだろう。

あの慌てようはなんだったのだ?!
そもそも人といると言っていたが、一体誰と?!
まさかそいつに無理やり付き合わされているのか?
大変だ。恋人の自分が守らなければ…と、エンリケは迷わず大通りに出るとタクシーを拾った。




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