こうして数ヶ月も経過して、アーサーに告白するのもすっかり日常の挨拶のようになってきた頃、エンリケは衝撃の告白を受ける。
『今更近すぎとかありえんやん。今までかて本気で嫌がってなかったやろ』
毎度のやりとりの中で出てきたそんな言葉に、アーサーは心底困ったように眉尻をさげた。
『悪い…。無理だ』
『なんで?なんで今さらそんな事言うん?』
確かに困惑したり少し邪険だったりとかしたことはあったが、最終的にはアーサーも許容していたはずだ…と、本気で突き放そうとはされていなかったという自負はある。
それならもう一歩進んでもいいじゃないか、大丈夫じゃないか、と詰め寄るエンリケに、アーサーの口からでてきた言葉はエンリケを地の底まで突き落とすものだった。
『お前…ずっと俺が好きだった奴に顔が似てるんだ…。だから突き放せなかった。
…でも、性格逆だから…。
お前だって薄々気づいてたろ?
俺その顔でその性格な事にイラっとしてよくお前に八つ当ってた事…。
お前のせいじゃまったくないのに、すげえ自分が嫌な事してるってずっと思ってた。
ごめん…。これ以上近づくときっと今まで以上にお前にひどいことする気がする。
だからもう少し距離を取ろう?』
誰と…なんて聞くまでもない。
またあいつなのか…と、打ちのめされた気分だった。
色々に恵まれた才能、人に好かれやすい明るい性格、数多くの友人達…何もかも持っているくせに、あの従兄弟は自分の唯一まで取り上げようとするのか……。
『それでも…それでもかまへんから…』
追い詰められたエンリケの言葉は、
『ごめん…無理だ…』
という小さな拒絶の前にかき消された。
白雪姫の継母のように…毒入りリンゴが欲しかった。
たとえ最後に王子に…光の側にいる多くの人々に救われてしまうとしても…少しくらいはこの苦しみに近いモノを体験してもいいんじゃないだろうか…。
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