「あ、エンリケ、もうすぐご飯だよ~」
「…要らん。食うてきた」
イライラするくらい明るい2つ年下の従兄弟。
不器用な双子の兄の方はまだ我慢出来たが、弟の方、フェリシアーノは色々な事に才能があるらしく、努力もせずに器用にこなす上に、明るく親しみを持たれる性格で、エンリケは大嫌いだった。
死ねば良いと、何度思ったかは知れない。
エンリケ達の祖父は教会の牧師だった。
ダラダラとたいして何かするわけでもないくせに、持ち前の様々な才能と人当たりの良さだけで世の中を渡って行くことが出来ている鼻持ちならない男である。
そりゃあ、そこまで贔屓されていれば、神という存在を信じ、敬う気持ちにもなるだろうと、エンリケは幼い頃から思っていた。
当たり前に何でも器用にこなし、当たり前に明るい性格で他人と打ち解け、当たり前に友人知人を作っていき、当たり前に評価される、そんな人種がいる一方で、自分のように人と打ち解けず、器用にこなせず、一人ぽつねんとするしかない人間がいる。
祖父…従兄弟のフェリシアーノ…そして…同じく従兄弟のアントーニョ。
当たり前に全てを持ち合わせている、光を浴びて世界の表舞台に立てる人種。
なかでも顔だけは似ていて年も1歳しか違わないアントーニョは昔から嫌いというのを通り越して、憎悪を感じるほどだった。
爺ちゃん、爺ちゃんと、祖父の周りにまとわりついてはしゃぐその姿に、何度殺意を感じたかわかりはしない。
祖父の方もアントーニョを特別に可愛がっていて、自分達が中学の頃、親戚一同揃っての旅行中の事故で、運悪く自分とアントーニョの両親のみが亡くなった時、自分はこの教会の敷地の一角にある離れに放り込んだくせに、アントーニョは祖父が所有していたマンションに住まわしてやった。
まあ幼い頃からエンリケにとってアントーニョや祖父は鬼門だったので、今更ではあったのだが…。
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