恋人様は駆け込み寺_番外編【白雪姫の継母の話】1

小さな頃…白雪姫の継母が好きだった。

彼女は簡単に後妻に出されてしまう程度には親の愛情に恵まれず、後妻に行った先には前妻の遺した娘を可愛がる、自分から見れば年老いた夫がいる。

彼らの主がそうなのだから、使用人達も前妻を慕い続けて、後妻の自分にはどこかよそよそしかった。

自身に子どもを授かる事もなく……誰も彼女を振り向かない。
そうして誰にも愛されず、誰にも望まれず、彼女は静かに病んでいく。

――鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだれ…?

唯一自分に残された美しい容姿。
それを利用できる相手もいなかったが、城の一室で彼女は寂しく鏡相手に語りかけるのだ。

――世界で一番美しいもの…それはあなたです、お妃様。

誰が認めてくれなくても、その瞬間の鏡だけは自分に残された唯一の価値、その美貌を認めてくれる。

もしかしたらいつかは鏡だけじゃなく、自分を道具として後妻に出した両親も、前妻を愛し続ける夫も、その主につられるように前王妃を慕い続ける使用人達も、その価値を認めて自分を愛してくれるようになるかもしれない…。

そんな寂しい妃の悲しい望みは、ある日鏡自身の言葉によって打ち砕かれた。

――鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだれ…?
――世界で一番美しいもの…それはこの城に住む白雪姫です…。






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