逃げる恋ならおいかけろ12

「…これ…何してくれとるん?」

視線で人を殺せそうな勢いの殺気。
スペインの自宅から即飛行機に乗り込み、ヒースロー空港に降り立ったイベリア兄弟を捕まえて、さきほどイギリス宅で撮ったデジカメの画像を見せたら、スペインがマジギレした。

リタイア後の老人のお茶目も解さないほど、頭に血が上っているらしい。
いや…爺ちゃんすでに死んでるから、天国に戻るだけだけどな…と、ローマは少し遊び過ぎた事をそれでもやや後悔する。

一方の隣では
「これ…スペインに壊されるだけやったらもったいないし、俺がもらっとこか~?」
と、ポルトガルがちゃっかりデジカメに手を伸ばすが、その前にデジカメはスペインの手に。
ちなみにスペインのもう片方の手はローマの襟首をしっかり掴んでいる。

「返答次第では成仏させたるけどな…」
と、どうやら逆鱗に触れて呼び出してしまったらしい帝国様に、これ以上は楽しく遊んではもらえないだろうと判断したローマが

「爺ちゃんに構うより、可愛いお姫ちゃんのとこ急いだ方がいいんじゃね?」
と、他人ごとのように言うと、スペインは乱暴にローマをポルトガルの方へ突き飛ばして、無言で走っていく。

「…あ…爺ちゃんのデジカメ~…」
と、その後ろ姿に手を伸ばすローマの肩を、若干ホッとしたような顔でポルトガルがポンポンと叩いた。

「あかんて。あいつ激しやすい奴やから」
代わりに俺が遊んだるわ~と、ヘラリと笑うポルトガル。

「ただし、爺のおごりな~」
自分が連れてきて持て余していたくせに、ちゃっかりそう言うあたりが、ミソだ。

「年寄りのヘソクリあてにすんなよ…」
と溜息を付きながらも、まだ天国に帰るには遊び足りない。

仕方なしに
「これ、金に換えてこい」
と、懐から出すローマ時代のコイン。

今では骨董的な価値もあって、かなりの値になる。
少なくとも二人が高級ワインの風呂に入れる程度には。

それを受け取って、
「ほな、行こうか~」
とただ酒に上機嫌なポルトガルと連れ立って、ローマはロンドンの街へと繰り出すことにした。

煽るだけ煽った帝国様は、お姫さんがなんとかするだろう…と、無責任な事を考えながら。



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