逃げる恋ならおいかけろ4

――ポル、お前マカオと親しかったよな?

最近、あれだけマメに折々につけて連絡を寄越していたマカオから音沙汰がない…と思いつつも、飲みに誘われたのでイギリスと飲んでいた時に、そう聞かれてポルトガルは珍しい人物から珍しい名前を聞くものだ…と、首をかしげた。


「最近あまり会うておらんけどな」
と、何か聞かれるのかと思ってそう言うと、イギリスは可愛らしくもあどけない笑顔でとんでもない言葉を吐き出してくれた。

「ああ、だってマカオは俺と付き合いだしたからっ」

ブ~ッと飲んでいたワインを吐き出したのは自分のせいじゃない…と、ポルトガルは思う。

幸いにして白ワインだったから、まあシミにはならないだろう。
むせ返って咳が止まらないポルトガルに

「ポル、大丈夫か?」
と、心配そうな顔でイギリスが差し出してくれるハンカチを受け取って、とりあえず口とワインのかかった袖口を拭く。

「なん?いつから?」
ようやく咳が治まってなんとか話せるようになったポルトガルが聞くと、イギリスは、ん~と考え込むように少し首を傾けた。

普段童顔を気にして気をつけているようだが、こうやって自分と二人きりで警戒していない時の仕草は相変わらずあざと可愛いと思う。

しかしいくら可愛かろうと自分の恋人を持っていかれるとしたら話は別だ。
ほうっておくわけにはいかない。

「前回の世界会議後くらいから?
実はこの前ポルと飲んでた時の電話香港からだったんだけどな、あれから香港とこ行ったら偶然マカオも来てて、一緒に食事したらなんだか気があっちゃってな」


イギリスとマカオ…付き合っているというのはどういう意味なのだろうか…。
いろいろがずれているイギリスのことだ。
必ずしも自分のような感覚で付き合っているわけではなく、もしかしたらよく少女達がお茶会をするような感じの付き合いをしているのかもしれない。

この二人だとどちらかがどちらかの上に乗っている図というのはどうも想像できない。
むしろ寝室にお菓子を持ち込んで一晩恋バナに興じる少女たちのようなパジャマパーティでもしてそうな雰囲気である。

ああ…そう想像すると可愛いかもしれない。


――そんな中に乱入して両手に花いうのも楽しそうやな…。
と、ポルトガルは左右にマカオとイギリスを侍らす自分を想像して、思わず表情をゆるめた。

大人しく従順な嫁さんと我儘なお姫さん、どちらも可愛い。
いつもは自分には冷たいお姫さんだってマカオと自分がイチャイチャしているのを見たら少しは羨ましく思ってつまみ食いくらいはさせてくれないだろうか…。

自分で言うのもなんだが、ベッドの中ではテクも体力も自信がある。
一度堕ちて来てくれれば、そのままずっとなし崩し的に…みたいな事もあるのではないだろうか。

3人で交際、ああ、素晴らしい。二人共経済に強く甲斐性もあるし、こぞって貢いだりとかしてくれたりしたら、さらに極楽である。

「なあ、今度3人で会わへん?」
そんな下心を胸に、しかし極力いつもの口調でそんな風に持ちかけたポルトガルだが、イギリスはその下心には気づいていないようだが、心底呆れたような、もう何言ってんだこいつ?と言ったような冷ややかな目で

「なんで恋人と会うのにお前付きじゃないと行けないんだ。冗談じゃない」
と、一刀両断切って捨てた。


こうなってはイギリスの方にはいくらプッシュしても無駄である。
ポルトガルは長年の経験からそう判断して

「ん~、最近マカオに会うてないから、久々に会いたいなぁ思うたんやけど。
自分が嫌ならええわ」
と切り上げた。

――お姫さんがダメなら嫁から攻めればええねん。

マカオが自分に逆らうとは思えない。
ポルトガルはそう判断して、その日はそのまま普通にイギリスと飲んで別れて、自宅へ帰る。

そしてメールを送ったのだ。

『なあ、マカオ…。最近俺の事放っておいて何しとるん?』



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