ベイビー・ベイビー9

【生後2,3か月から早い赤ちゃんは笑います。大人を模倣するので赤ちゃんに笑って欲しいなら、大人の方が赤ちゃんにいっぱい笑いかけてあげましょう。】



そんな風に忙しくしていても、スペインは楽しそうだ。
暇さえあれば笑顔でアンジェに話かけている。

だからだろうか…アンジェはいつもいつも向けられていたその笑顔を早くも模倣したらしい。

赤ん坊が笑うのは早ければ2,3カ月、遅い子で半年らしいが、アンジェは2カ月を過ぎた頃から嬉しそうに笑うようになった。

よく笑う子なので、散歩に連れていっても周りから可愛いと笑顔を向けられるし、それでまた笑う事を覚えていく。


こうしてよく笑う親子は散歩コースの公園で子どもからお年寄りにまで可愛がられる人気者になったようだ。

『よお笑顔を向けてくれる子ぉはな、可愛がられるから、幸せになれんで。』
と愛おしげにアンジェリカに頬ずりをするスペインの姿は、まんま若い父親である。

自分一人ではこうはいかなかったと、誤解からとはいえスペインが一緒に子育てをしてくれていることをイギリスは秘かに感謝した。


【赤ちゃん体操なんて名前じゃなくても赤ちゃんの動きに少し手を添えてやるくらいでも大丈夫!】

「ほ~ら、アンジェ、トマトマンやでぇ~」
食後、イギリスが食器の後片付けをしている間、スペインが人形を手にアンジェをあやしている。

トマトマン…というのは、どこから入手したのかわからないが、トマトに手足がついた、イギリスからすると気味の悪い人形なのだが、スペインとアンジェのお気に入りのおもちゃだ。

3か月くらいから相手の行動に対してはっきり反応を示し始めるようになったアンジェはぷにぷにと柔らかいそれをゆらすと、手足がぷらぷらゆれるのが楽しいらしく、きゃっきゃっとよく笑う。

それで一通り遊ぶと、今度は寝ころんだアンジェの手足をスペインが持って動かすと言う赤ちゃん体操タイムになるのが日常だ。

赤ちゃん体操…とイギリスは言っているが、スペインは
『そんな大層なもんやないでぇ。ただのトマトマンごっこや』
と、ほらぷ~らぷら、と、アンジェの小さな手足を揺らしてやっている。
するとアンジェはますます楽しそうな笑い声をあげた。

育児ビデオの通りに…と、イギリスがきっちりと手足を取って動かさせていた時は嫌がってう~う~唸っていたのとは偉い差だ。

「親がな、楽しんどったら赤ん坊かて楽しいんちゃう?
誰だって難しい顔でやる仕事より、笑って遊ぶ方が好きやん?」
と言われれば、返す言葉もない。

やっぱり…こんな自分だからアメリカがあんな風に離れていってしまったのだろうか…とイギリスが落ち込み始めると、マ~ドレ、と、ポンとアンジェを渡された。

「ちょお親分そろそろご飯の準備してくるから、アンジェ休ませたって。
パドレと一緒やとテンションあがって寝ぇへんわ。
ねんねの時はマドレやんな?」
と、イギリスの手の中のアンジェのぷくっとした頬をツンツンつつくとスペインはキッチンへと消えていく。

すると途端に疲れている事を思い出したのだろうか…。
アンジェはふあぁぁと小さなあくびをすると、イギリスの胸にすりすりと頭を擦りつけ始めた。

「…そろそろおねむか。確かにお昼寝タイムだな。」
と、それを見て小さく笑うと、イギリスはぽんぽんとその小さな背中を一定のリズムで叩きながら子守唄を歌ってやる。

そう言えば…アンジェは寝る時はイギリスが寝かしつける方がよく眠る。

「アンジェは遊ぶ時は思い切り遊ばせるパドレで、眠い時は優しく寝かしつけてくれるマドレなんやで。
どっちもアンジェは大好きなんや。」

と、少し落ち込み気味だったイギリスにアンジェの気持ちを代弁するようにスペインの声が振って来て、
「ほぃ、味見」
と、今日の料理のソースをすくったスプーンが口に差し込まれる。
「ん…美味い。」
と、それにイギリスが素直に頷くと、
「ほなこれでいくな~」
と、スペインはまたキッチンへと戻っていった。



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